経営統合とは?メリットやデメリット、事例を紹介

平日9:00〜17:00

フォームでのお問合わせ

  • 事業承継知識

経営統合とは?メリットやデメリット、事例を紹介

経済に関するニュースを見ていると「経営統合」という文字をよく見ます。経営統合とは、複数の会社が集まって新しい会社(持株会社)を作り、それぞれの会社がその傘下に入ることです。「合併と何が違うのか?」「新しい会社を作るメリット・デメリットは何か?」など、経営統合に関する疑問を持っている方も多いことでしょう。

この記事では、経営統合の定義からメリット・デメリットまで詳しく解説します。経営統合について詳しく知りたいという方や経営統合の成功例を知りたいという方は、ぜひこの記事を読んで参考にしてください。

経営統合とは?

経営統合とは、複数の会社が集まり共同で持株会社を設立し、それぞれの会社が新会社の傘下に入る手法のことです。具体例を挙げると、株式会社A、B、Cが株式会社Dを設立し、Dの傘下にA、B、Cが入る、という構図です。このとき、A、B、CはDの完全子会社となり、3つの会社の株は新会社Dが所有します。

経営統合をした場合、子会社となったA、B、Cの法人格はそれぞれ独立して維持されます。そのため、全く違う経営方法の会社同士が経営統合をすることが可能です。そのため、時間をかけて緩やかに複数の会社を統合したい場合などに用いられることがあります。

経営統合と合併の違いとは?

複数の会社が合体して1つの会社を作る方法として合併という手法もありますが、経営統合と合併は法人格の維持の観点で大きな違いがあります。

以下に、経営統合と合併の違いを解説します。

経営統合と合併の違いは会社の数?

経営統合と合併の最も大きな違いは、法人格の消滅有無です。経営統合は既存の会社が全て新会社の子会社になるので法人格は消滅しませんが、合併ではいずれか会社の法人格が消滅します。

合併には、「新設合併」と「吸収合併」の2つの種類があります。新設合併は、2社以上の会社が新しい会社を設立し、そこに既存の会社が持っていた全ての権利や義務を引き継がせることで、この場合既存の会社は消滅し、法人格を維持することはできません。たとえばA社とB社が新設合併してC社を設立する場合、A社もB社も法人として消滅することになります。

吸収合併の場合は、1つの会社に他の会社が吸収されて法人格が消滅します。A社がB社に吸収合併された場合は、A社の法人格が消滅することになります。

経営統合のメリットは?

経営統合をすることで、統合にかかわる全ての会社が法人格を維持し続けることができます。以下にメリットを紹介します。

経営統合による従業員の混乱を回避する

経営統合の場合、各子会社は法人格を維持したまま事業を継続するため、子会社間でシステムや人事制度などを統合する必要はありません。どちらかの会社にシステムを無理矢理合わせると、従業員が新たな組織形態に慣れるまでにある程度の混乱をきたす可能性があります。経営統合であればこのような混乱を避け、円滑に事業を継続することができるでしょう。

また、合併で1つの会社になれば人事にも影響が出て、時には人員整理が必要となるケースも生じますが、経営統合であれば子会社がそれぞれで独自の人事制度を採用することが可能です。

大きな人事異動やシステムの大幅な変更は、従業員に混乱を与えることになります。日常業務だけでなく、大規模なプロジェクトや社外とのやり取りが滞る可能性もあるでしょう。組織が大きいほど、再編や変更に時間と手間、そして費用がかかります。従業員がスムーズに仕事を続けられる環境を保てることは、経営統合の大きなメリットです。

共倒れとなるリスクが減る

複数の会社が共同で事業行う形となる経営統合では、それぞれの会社の法人格は独立を保ち独自に事業を運営します。そのため、仮にいずれかの会社の経営が悪化したとしても、他の会社の経営には影響しづらく、共倒れになるリスクも殆どありません。

合併では複数の会社の業務が統合されるため、ある事業で大きな損失が発生すれば、他の事業にも影響を与えてしまいます。

シナジー効果が期待できる

経営統合は、いわば1つの会社の中に複数の会社があるようなものです。複数の会社や事業部門がお互いに人材やノウハウを共有することで「シナジー効果」を期待できるでしょう。

子会社同士のコミュニケーションを日ごろから円滑にしておくことで、親会社と子会社双方の良い影響を受けられるようにしましょう。

大局的かつ迅速的な意思決定が可能となる

複数の会社が同じ事業をする際、全く接点がないと足並みが揃えにくいものです。経営統合することで、ある程度足並みを揃えられるうえ、親会社の権限で、会社を統制し監視する仕組みが強化できます。

経営統合ではそれぞれの会社の法人格を維持しつつ、株式(経営権)は持株会社に移転します。経営権と業務管理を分離することで、意思決定の迅速化や戦略的意思決定への集中を図ることが可能となります。

経営統合により、実務的な管理は各企業に委譲しつつ、持株会社は戦略的意思決定に集中できますので、経営に関する意思決定がスピーディーになるのです。

経営統合のデメリットは?

ここまで経営統合のメリットについて紹介しましたが、もちろんデメリットもあります。

以下に、経営統合のデメリットを解説します。

仕事が効率的に回らない可能性がある

経営統合をして新しい会社の子会社となっても、あくまで別々の会社として事業を行うことになります。そのため、システムや経理・会計の仕組みなどが異なり、親会社がまとめる際に事務作業に手間がかかってしまい、非効率になる可能性があります。

親会社が子会社を含めてシステムを一本化、統一すればいいのですが、既存のシステムを変えるのもすぐにできるものではありません。決算期など事務作業が大変な時期に経営統合した場合、従業員の負担も格段に増えるかもしれません。

できれば、経営統合までに親会社・子会社のシステムや経理の仕組みを把握し、ある程度合わせておくのがよいでしょう。また、経営統合後のことを考慮して、子会社同士のコミュニケーションを取りやすいようにしておきましょう。

いろいろな部門がやたらと増える

会社の法人格は消滅せず、子会社同士が独立しているため今までどおり事業を続けていけるのが経営統合のメリットです。一方で、似たような部門が子会社同士で複数あり、組織が複雑化するデメリットもあります。

組織が肥大化すると、どの部署が何を担当するか分かりにくくなることがあるでしょう。また、人が増えすぎると意見の統一も困難になり、小さなことを決めるだけでも時間がかかるようになる懸念もあります。

経営統合と資本提携の違いについて

2つ以上の会社が協力して事業を行う方法の1つに、「資本提携」があります。資本提携とは、複数の会社が業務面や資本面で協力をして事業を成しとげていく方法です。

経営統合とよく似た仕組みですがこの2つには明確な違いがあります。以下に、資本提携の詳しい仕組みなどを解説していきます。

資本提携とは何?

資本提携とは、経営権を取得しない範囲で他社の株式を持つことで協力関係を築く方法です。たとえば、とても魅力的な事業を行っている一方で、資金繰りが厳しいA社の株をB社が買い支えるようなケースが該当します。資本提携は1つの会社が別の会社の株を買うことが多いですが、お互いの会社の株を持ち合うこともあります。

提携解除は難しい

資本関係をもつことによって強固な関係性の構築が可能になる一方、いったん構築した資本関係を解消することは容易ではありません。

提携解消時には保有している提携先の会社の株を売却する必要があります。また、提携先の会社が所有する自社の株式を買い戻さなければならなくなる可能性もありますので、資金繰りに余裕がないと、もし資本提携にメリットがなくなったとしても提携をし続けなければならないこともあります。

そのため、資本提携をする際は、メリットとデメリットをよく比較した上での決断が大事です。

経営統合と業務提携の違い

提携の方法には、資本提携だけではなく業務提携もあります。
経営統合と業務提携の違いについて詳しく解説していきます。

業務提携とは何?

業務提携とは、経営が独立している企業同士が、提携契約により決まった業務について共同して業務を行うことです。

資本提携と違い、どちらかの会社の株を買うことはありません。また、経営統合のように新しい会社を作って既存の会社がその傘下に入ることもなく、業務提携の契約書を交わすのみです。そのため、経営が安定していてお互いに提携するメリットのある会社同士が行う方法といえるでしょう。

業務提携には、販売提携・技術提携・共同開発提携・生産提携など様々な方法があります。

自社が培ってきたノウハウが流出するリスクがある

業務提携を行うと、相手の会社に自社が培ってきた生産や販売のノウハウを知られるリスクがあります。場合によっては、業務提携終結後に自社の製品を模倣した商品を作られたり販売方法を真似されたりする恐れもあるでしょう。

事前にリスクを把握した上で、業務提携をしたなかで知った情報を自社の仕事に流用しない、といった内容を含んだ契約書を交わしておきましょう。

経営統合の成功例は?

これまで、経営統合のメリット・デメリット、合併や提携との違いを紹介してきました。
経営統合の成功例として2つの会社を紹介します。

UKCHD(現:株式会社レスターホールディングス)

UKCHDは、2009年にソニー系エレクトロニクス商社であった「ユーエスシー」・「共信テクノソニック」という2社が経営統合し、共同持株会社として設立された会社です。ソニー製イメージセンサーを主力とし、半導体や電子部品なども取り扱っています。

経営統合して以来、東証一部に株式を上場したほか、CU TECH CORPORATIONとその子会社である東莞新優電子有限公司を子会社化し、株式会社ユーエスシーを吸収合併するなど、会社を成長させ続け、2019年にはバイテックホールディングスと経営統合し、レスターホールディングスに商号を変更しました。

ミネベアミツミ

ミネベアミツミは、長野県北佐久郡に本拠地を置くベアリング、モーターを主力商品とした電気部品メーカーです。1951年に創業した歴史ある会社ですが、1961年に高橋高見が社長に就任した後は、多角経営に乗り出して積極的にM&Aを繰り返してきました、そして、2017年、ミネベアとミツミ電機が経営統合し、ミネベアミツミと名前を変えます。

ミツミ電機は、エレクトロニクスに強く、ミネベアはメカトロニクスに強いというそれぞれの強みを活かして売上高年間1兆円規模の会社を作るという目標を立てました。

さらに翌年、ミネベアミツミは自動車部品を製造するユーシンと経営統合を発表しています。この経営統合によってミネベアミツミは、エレクトロニクス・メカトロニクスだけでなく、自動車部品にまで自社のノウハウを活用しより高品質な製品を作ることが可能になりました。さらに、ユーシンの世界15カ国に渡る拠点と顧客情報を活用し、さらなる市場開拓も目指しています。

このように、新しい事業を一から立ち上げるのでは無く、すでに一定の成果を上げている会社と経営統合をすることによって素早く新しい市場を開拓できるのは、大きなメリットといえるでしょう。

経営統合の成功事例に共通していることは?

では、経営統合に成功した会社にはどのような共通点があったのでしょうか?

以下に、成功のポイントを解説していきます。これから経営統合を控えている、もしくは経営統合を視野に入れているという方は、ぜひ参考にしてください。

双方の経営幹部の十分なコミュニケーション

経営統合は、それぞれの会社が法人格を消滅させること無くお互いに協力し合えるという強みがあります。ただし、そのためにはお互いが行ってきた仕事のうち、どこをどのように協力していくのかコミュニケーションを綿密に取らなくてはなりません。特に経営幹部の意思疎通は重要です。

経営幹部が「この方針で事業を行っていく」という指針を示せば、部下も安心して働けるでしょう。経営幹部の意思が統一されていなければ、指示がコロコロ変わって現場が混乱してしまうため、しっかりと指針を示すことが重要です。

現場の従業員とも十分なコミュニケーション

経営陣同士が綿密なコミュニケーションを取りながら会社の指針を決めたら、現場の従業員同士も綿密なコミュニケーションを取れる環境を作りましょう。

全く別の会社同士が協力するのですから、コミュニケーションはとても大切です。どちらかの会社が優遇されるような事態になれば、労働のモチベーションが低下してしまいます。

最初からスムーズにコミュニケーションを取ることは難しいかもしれません。そのため、コミュニケーションについて相談できる環境を作りましょう。

経営統合の手続きについて

では、実際に経営統合はどのような手順で行うのでしょうか?以下に、経営統合の流れを解説します。

経営統合の流れ

経営統合には、「株式移転方式」と「株式交換方式」があります。それぞれの流れについて紹介します。

株式移転方式の場合は、複数の会社が経営統合したあと、持分会社となる親会社を設立します。その後、それぞれの会社の株式を親会社に移転して完了です。

一方、株式交換方式はまず株式の交換方法の手順を取り決め、次に持株会社となる親会社が子会社の株式を取得します。通常、株式は現金を対価に取得しますが、株式交換方式の場合は対価として親会社の株を譲渡します。これが「株式交換」と呼ばれる理由です。

まとめ

経営統合は、複数の会社がお互いの利益のために行うため、価値観などがぶつかるとなかなか話し合いが進みません。スムーズに経営統合を進めたい場合は、M&Aアドバイザリー会社に依頼して折衝してもらうのも1つの方法です。

HLサクセション株式会社は、オーナー会社の永続的な発展をM&Aの側面からサポートする会社です。当社はM&A専業のアドバイザリーファームとして独立資本をもっているので、会社の規模に囚われることなく、「人」を大切にする経営を心がけることができます。また、「お客様の最善の利益のために」を意識した提案を第一優先と考えています。

経営統合の話を進めている最中も、会社は事業を継続しなければなりません。当社は豊富な経験と実績をもって、クライアント様の利益第一のアドバイスと提案を行い、事業に穴を開けることなくスムーズな経営統合ができるようにサポートいたします。

また、当社はオーナーの専属アドバイザーのため、仲介型ではなく「代理人型」で事業を行っています。交渉の相手方からは報酬を一切頂くことはないため、クライアント様の利益を最優先として第一に交渉が可能です。

もし経営統合や事業承継M&Aに関してお悩みであれば、ぜひHLサクセションにご相談ください。

記事監修

HLサクセション株式会社は、オーナー様企業における事業承継案件に特化した代理人型M&Aアドバイザリー会社です。「お客様の最善の利益のために」、オーナー様専属のアドバイザーとして、クライアントのご意向に沿ったM&Aの実現を徹底的に追求いたします。

  • M&A
  • エムアンドエー
  • シナジー効果
  • ファイナンシャルアドバイザー
  • 代理人型
  • 子会社化
  • 完全子会社化
ご相談・ご質問など、お気軽にお問合せください。

お電話でのお問合わせ(平日 9:00〜17:00)

03-6212-7110