後継者がいない経営者はどうすればいい?解決方法は?

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後継者がいない経営者はどうすればいい?解決方法は?

第一線で働いてきた中小企業の社長にとって、後継者選びは重要な課題です。後継者が決まっていない場合、いつまで自分が会社を引っ張っていけるのか、自分が引退したあと会社をどうするか、といった不安が常にあるでしょう。

すでに後継者が決まっている場合は業務の引継ぎさえ滞りなく進めば問題ありませんが、継いでくれる人がいない場合、会社の存続が危うくなりかねません。

この記事では現状で後継者がいない場合、今後どのような選択肢があるのか解決方法やポイントをご紹介します。

社長の平均年齢は60.1歳

帝国データバンクの「全国社長年齢分析」によると、2020年度の日本の社長の平均年齢は 60.1 歳でした。調査開始から初めて60代を超えており、1994年の平均年齢54.0歳と比べると経営者の高齢化は確実に進んでいます。

年代別の構成比でみると、50代の社長は26.9%、60代が最多の27.3%、70代が20.3%、80歳以上が4.4%。つまり日本の経営者の半数は、60代以上が占めていることになります。

60代は心身ともに不調が出たり、若い頃と比べて体力が衰えたりする方も多く、引退や引き継ぎに向けて準備を始めたいと考え始める年齢です。しかし、会社をどうするか考えるべきであることがわかっていながらもまだ具体的な行動に出ていない経営者が多く、結果的に70代以降も経営者でい続けてしまう、というケースが多いことは年代別の構成比からみても明らかでしょう。

(出典:『全国社長年齢分析』(2021年)

後継者不足が深刻

帝国データバンクの「全国企業「後継者不在率」動向調査(2021 年)」によると、日本の経営者のうち、後継者不在率は 61.5%でした。日本政策金融公庫の調査では、60歳以上の経営者のうち50%以上が将来的な廃業を予定しており、このうち「後継者難」を理由に廃業を見越している企業は約3割に迫ります。

この調査から、自身が高齢で引き継ぎをしたいと考えている経営者が多い一方で、後継者が決まらず廃業せざるを得ない、というケースが今後増えることが予測されます。急務であるにもかかわらず、後継者不足は深刻化しているのが実情なのです。

(出典:『全国企業「後継者不在率」動向調査』(2021年)

後継者がいない場合の選択肢とメリット・デメリット

後継者がいない場合、そのまま廃業になるのを避けるためにはいくつかの選択肢があります。それぞれの方法をメリット・デメリットも含めてご紹介します。

身内や従業員内での事業承継

第一の選択肢は事業承継で、次の後継者に事業を引き継がせることです。子どもや親族に引き継がせる「親族内承継」がもっとも一般的です。ただし、経営者が負う苦労などを見て育っていることや、大学卒業後になりたい職業に就くなどの理由で、社長職を継がないケースもあるでしょう。

身内の間に継承者が見つからない場合に取られる選択肢として、役員や社員などの従業員に引き継がせる「親族外承継」があります。ただし、引き継ぐ際の手続きが親族内継承ほど簡単ではないという点に注意しましょう。

メリット

身内や従業員内での事業承継のメリットは、まず、事業の内容を理解している相手に引き継げる点です。親族、特に子どもの場合は育ってきた環境で事業との接点があり、社内の人間の場合はすでに仕事を通じて事業内容を理解しています。

また、もともと人柄がわかっているため、後継者としての育成がしやすいのも大きなポイントです。

社内外への影響を少なく抑えられることもメリットといえるでしょう。特に親族の場合、相続制度を利用して、会社の株式や財産を一体的に継承できるほか、経営権を親族内で維持できます。親族外承継の場合でも、事業に携わってきた経験から円滑な継承が可能です。

デメリット

親族内承継の場合、株式の相続も絡むため、後継者以外の身内の間でもめ事が起きるリスクがあります。

一方、親族外承継の場合、相続制度を利用できないため、経営者から自社株取得を取得するための費用が必要となります。そのため、資金調達ができない場合は親族外承継が実現しない可能性もあります。経営者にとっても大きな売却益は見込めませんので、引退後の資金にと考えている場合は注意が必要です。

後継者になるということは、経営権だけでなく、経営者の個人保証も引き継ぐことも意味するため、後継者には大きな負担となります。

M&A(第三者への承継)

M&Aとは「Merges(合併) and Acquisitions(買収)」の略語で、企業の合併買収、具体的には会社あるいは経営権の取得を意味します。2つの企業が合体して1つになる場合は合併、1つの企業がもう一方の企業を買い取る場合は買収です。

合併の場合は、売り手側の企業が買い手側の企業に、自社で保有する権利や義務を譲渡して解散し、売り手側の法人格が消滅します。

一方、買収の場合は、売り手側の企業が経営権や一部の事業を買い手側の企業に譲渡するものの、売り手側の法人格は存続するという違いがあります。

メリット

M&Aの場合、身内や社内の人間の中から後継者を見つけられなかった場合でも会社を存続できるため、倒産を回避して従業員の雇用を守れます。また、必要な条件を満たすことで、経営者個人が連帯保証人となって負ってきた個人保証の解除も可能です。

負債ごと引き継いでもらえるため、経営者にとっては大きな荷物を下ろすことができるでしょう。さらに、事業を高く売却できれば、経営者にとっては引退後の生活資金などを確保する上で大きな利益となります。

デメリット

M&Aでは、すぐに買い手が見つかるとは限りません。もともと経営難を抱えているケース、あるいは将来性が低いとみなされるケースでは、より安い価格での交渉を求められ、希望の売却価格で売れない可能性もゼロではありません。

M&Aは準備から交渉、最終契約の各フェーズでさまざまな準備や交渉が発生するため、かなり複雑なプロセスです。そのため、売却完了までは通常6ヶ月~8ヶ月程度かかり、ある程度時間を要する点は注意が必要です。

株式公開(IPO)

株式公開(IPO=Initial Public Offeringの略)とは、親族や特定の関係者のみに限られていた株式の保有を、新規に証券取引所に上場して証券市場に流通させることで、誰でも自由に売買できる状態にすることです。上場を通じて株式は多数の投資者に配分されて取引され、株式の投資判断のための情報開示も行われます。
なお、近年においては、株式公開の準備と並行して、M&Aによる第三者承継も検討する経営者の方が増えています(デュアルトラック)。デュアルトラック方式を採用することにより、①このまま株式公開をするか、②全株式を第三者に譲渡するか、③一部株式を第三者に売却し協働してより規模の大きい株式公開を目指すか等、条件を徹底的に比較した上で、最も有利な選択肢を選ぶことも可能です。

メリット

株式公開時に売却益を受け取れるほか、自社株をそのまま保有し続けることが可能です。証券市場を通じてさまざまなかたちでの資金調達が可能となり、資金調達力が強まります。

上場によって企業としての知名度が上がり、社会的な信用も高まるため、今後の販路拡大や新規顧客獲得が期待できます。また、上場企業としてふさわしいガバナンス・管理体制が構築されます。従業員の士気向上につながるとともに、優秀な人材も確保しやすくなるでしょう。

デメリット

投資家が安心して取引ができるよう、上場には厳しい条件が設けられています。そのため、株式上場に向けた審査はかなり厳しく、手続きが複雑で準備に膨大な手間がかかる上に、株式公開準備に必要なコストも数年にわたり負担が発生します。

また、せっかく膨大な手間暇とコストをかけて準備を進めたからといって、必ずしも上場できるとは限りません。さらに、業績向上や企業価値向上に対する株主やアナリストからの圧力、社会的責任の増加など、経営に対して社外からの影響力が増すのも事実です。

後継者がいない問題を解決する際のポイント

後継者がいない問題を解決するには、具体的な準備を早めに始めるとともに、事業承継に向けて会社をよりよい状態にしておく必要があります。何から着手したらいいか不明な場合は、専門家に相談する手もあります。

具体的な準備を早めに始める

身内や従業員内での事業承継、M&A、株式公開、いずれの選択をするにしても、成立するまでには準備や交渉、手続きなどにかなりの時間がかかります。そのため、具体的な準備は早めに着手するに越したことはありません。事業の継承者や従業員、取引先への影響を最小限に抑えるために、万全の準備を行う必要があります。

準備を遅らせたばかりに、準備や手続きに十分な時間が割けない状態では、最良の選択ができない可能性があります。例えばM&Aを選択した場合、限られた時間の中で不本意な金額で合意せざるを得なくなるかもしれません。取り返しがつかなくなる前に、準備は早めに着手しましょう。

会社をより良い状態にしておく

事業承継する場合は、少しでも後継者がスタートしやすいように、できるだけ会社を良い状態に整えておくのが賢明です。経営状態や課題を明確にして改善し、会社の価値を高める取り組みを行いましょう。

特にM&Aを通じて第三者に事業を継承する場合は、希望の条件に見合った買い手が見つかるように、資産や経営課題などをきちんと相手に提示できるよう準備しておく必要があります。

専門家に相談する

後継者問題や事業承継は頻繁に発生する事柄ではないため、最初からノウハウがないのは当然です。いずれの選択肢もプロセスが複雑な上に時間がかかるため、自力での解決は困難を極めます。

何から始めたらよいのかわからない場合は、その道の専門家に相談するのがおすすめです。まず、税理士や公認会計士など、普段から付き合いのある士業に相談してみましょう。

M&Aを選択する場合は、M&Aを専門とする仲介業者やアドバイザーに相談するのがおすすめです。M&Aを進めるには準備・手続きが必要です。どの企業に買い取ってもらうか、M&Aにおいて譲れないポイントはどこか、自社のアピールポイントはどんなところか、など、M&Aにおけるあらゆることについて経験豊かなプロのアドバイスを受けることには大きな価値があるでしょう。

廃業するメリットやデメリットは?

ここまで後継者がいない場合の対策を紹介しましたが、どうしても後継者が見つからない場合は最後の手段として廃業があります。廃業は文字どおり、事業をたたむことです。会社が所有する土地、建物、商品在庫、機械、設備などを売却し、負債などの諸費用を精算します。

業績が悪化してやむを得ず廃業する場合もありますが、経営がうまくいっている企業であっても廃業を選択する場合もあるので、債務の支払い不能に陥る、あるいは経済活動を続けるのが困難になった状態を指す倒産とは異なります。

廃業により、現在の会社の資産から負債を差し引いた分の金額が、経営者の手元に財産として残る可能性があるというのはメリットといえるでしょう。今後新たに事業を興す、生活資金に充てるなどの経済的な余裕が生まれます。

一方、廃業のデメリットとして、廃業そのものに向けた手続きが発生し、また経営者本人が廃業に伴う損失を負う可能性があります。もともと経営不振で負債が多い場合は、廃業後も返済に追われることが予想されます。

何よりも従業員には職場がなくなるため、収入源が失われ、それまで積んできたキャリアや経験が活かされなくなるなど、各従業員の人生そのものに影響を与えます。取引先の事業にも影響を与えるため、廃業は社会的に大きな損失といえるでしょう。

後継者がいなくてもM&Aによる事業承継が可能

社長の平均年齢が60.1歳の日本で、後継者不足は中小企業全体が抱える深刻な課題です。身内や社内への事業承継がままならない場合は、株式公開(IPO)やM&A、廃業などの手もありますが、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて検討する必要があります。いずれの選択肢もかなりの時間を要するため、早めの準備が肝心です。

特にM&Aの場合は専門知識が必要となるため、その道のプロに協力を仰ぐのが賢明です。HLサクセションでは、M&Aを通じて貴社の最大価値を引き出し、もっともふさわしい相手先の承継を実現するためのお手伝いをいたします。自社がM&Aできるのかどうか、希望に沿う承継先が見つかるか、といったお悩みがある経営者の方はぜひ一度ご相談ください。貴社の事業内容や買い手に望むことなどを伺ったうえでM&Aが向いているかどうかや最適な引き継ぎ先のご提案をいたします。

記事監修

HLサクセション株式会社は、オーナー様企業における事業承継案件に特化した代理人型M&Aアドバイザリー会社です。「お客様の最善の利益のために」、オーナー様専属のアドバイザーとして、クライアントのご意向に沿ったM&Aの実現を徹底的に追求いたします。

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