事業承継がうまくいかない理由は?失敗事例をもとに解説

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事業承継がうまくいかない理由は?失敗事例をもとに解説

事業承継を考えている経営者の方には、うまくいくかどうかが不安でなかなか行動に移せない方も多いのではないでしょうか。M&Aの事例には多くの成功例が紹介されていますが、その裏では少なからず失敗してしまうケースがあるのも事実です。今まさに本記事を読みながら「もし失敗したらどうしよう」と二の足を踏んでいる方もいらっしゃるでしょう。

事業承継がうまくいかない要因は多岐に渡ります。たとえば、事業を任せる継承者が見つからずに終わってしまう場合や相続している最中に親族・社内派閥がトラブルとなる場合、相続後に資金繰りがうまくいかなくなり業績悪化してしまう場合など、理由は様々です。

事業承継をより確実に成功させるためには、過去の失敗事例を把握し、自社の状況と比較した上で対策することが大切です。この記事では事業承継の失敗事例を紹介し、事業承継が失敗するというのはどういうことなのか、どうすれば失敗を避けられるのかを解説します。

事業承継が失敗した過去の事例と対処法

まず、どのような場合に事業承継で失敗してしまうのか、7つの事例を紹介します。失敗した原因からそれぞれの対処法を考えていきましょう。

オーナーの不在による会社存続の困難

【事例】
事業承継の準備が進まないうちに、創業者であるオーナーが突然病気になってしまいました。急遽、役員をしていた弟に事業を引き継ぎましたが、弟にも健康面の懸念が発生。オーナーの健康悪化により業績が悪化し、的確な経営判断ができる経営者が不在となった結果、会社の存続も難しくなりました。

【対処法】
なにも準備していない状態で突然業務承継がされれば、後継者も従業員も混乱します。加齢や生活習慣によっては、健康と思っていても何が起きるかわかりません。

いざという時のために備えて後継者の選出や段取りを決めておけば、社内の混乱を防ぐことができます。会社を存続させるためには、事業承継の準備や計画を前もって進めておきましょう。

オーナーが急死し遺産をめぐる相続争いに発展

【事例】
手広く事業を展開していた創業者であるオーナーが急死しました。突然のことで遺言書はなく、法定相続人は現社長の長男と経営に関わっていない次男の2人でした。

長男である社長は事業存続のため、遺産のうち事業用不動産をすべて相続したいと申し出ました。しかし、次男が遺産分割を主張したため、兄弟両方に事業用不動産が相続されました。相続後、次男は相場よりも高値で長男に不動産の買い取りを求め、長男は事業を続けるために買い取りを受けざるを得ない状況になりました。

【対処法】
オーナーが事前に相続を明確にしていなかったため、事業承継が失敗したケースです。事前に相続先を決めておけば、会社は事業用の不動産を失うこともなく、買い取りのための余計な費用をかけずに済んだでしょう。

オーナーは事業に大きな影響が出ないよう、事前に事業承継や遺言書の準備をしておきまししょう。特に相続問題は、オーナーの死後大きな混乱を招く要因になります。遺産の分配が会社存続を左右する要因にならないよう、綿密に計画して備えましょう。

親族トラブルが発生

【事例】
父である経営者は社長引退と同時に「長男」に経営権を、「次男」には株式の一部を相続しました。事業承継後は長男が経営者として会社を運営し、次男はほかの企業で勤めているので経営には関わらないことになりました。

しかし数年後、長男の経営する会社の業績が悪化し、長男は業績改善に奔走することになりました。業績悪化にもかかわらず、次男は正当な報酬だと「配当」を要求し続け、結果、長男の会社は業績改善できず経営を続けられなくなりました。

【対処法】
事業承継時点における親族関連のトラブルは多いですが、同じくらい事業承継後のトラブルも少なくありません。特に、経営に関わらない親族へ株式を保有させてしてしまうと、上記のようなトラブルのほかにも、経営状況を把握していないにも関わらず経営へ口出ししてくる、というようなトラブルの原因にもなります。

たとえ兄弟であっても、それぞれの社会的立場が異なるのであれば明確に線引きをするべきでしょう。トラブルを避けるためにも親族間の事業承継は慎重に行うべきです。

事業承継後も元経営者が退かない

【事例】
オーナーが高齢のため、息子に社長を譲ることを決意しました。自身は会長に就任しましたが、社長を退いたあとも株式を過半数保有していました。そのため、事業承継後も会長が経営の実権を握ったままとなり、受け継いだ息子は社長とは名ばかりの状況になってしまいました。

事業承継を行った数年後、会長と社長の間で対立が始まります。同時に、会社内が混乱するなかで、会長が実質的な経営権を握っているから経営者は会長であるという考えが従業員内で広がり始めました。結果、社長は社内の信頼を失い、会社を追い出されることになってしまいました。

【対処法】
事業継承を行ったのであれば、後任を信じて任せることが重要です。そのためには、単に役職に据えるのではなく、じっくりと時間をかけて後継者を養成する必要もあります。事業承継においては、後継者へアドバイスをしながら会社へ貢献することも前経営者の重要な役割です。前経営者は決定権を持たないことも検討して、どのように事業承継するべきかを検討しましょう。

後継者が見つからない

【事例】
経営者が息子や娘に後を継いでもらうよう促しても後継者になる意思はないと言われてしまいました。そのため幅広く後継者を探し続けましたが見つけられず、体力的にも限界を迎えてしまいました。

従業員や役員などにも声を掛けましたが良い返事をもらえません。このままでは自分の引退とともに廃業を選択することになってしまいます。

【対処法】
息子や娘がほかの職場で定職に就いている場合、起こりうる問題です。この場合、第三者に事業承継させることも視野に入れたほうが良いでしょう。後継者を見つけるために、事業承継やM&Aの専門家に相談する方法もあります。事業を継続させるためにも、早めの相談が重要です。

派閥争いで会社資金が流出してしまう

【事例】
経営者である男性は長男に株式の60%、次男に株式の40%をそれぞれ保有させていました。年月が経ち、長男は社長となり次男は専務として事業承継します。

実際のところ、社長になった長男よりも専務である次男が会社の成長に貢献する活躍をしていました。しかし、前経営者の父は自分の意思を貫き、強引に長男を後継者として社長に任命しました。

結果的に、長男が社長に就任したことに次男が反発し、派閥争いに発展します。専務である次男は会社を辞めると同時に、保有株式の買い取りと自身の退職金を社長に要求しました。そのため、数億円の資金が会社から流出することになってしまいました。

【対処法】
強引に後継者を選ぶとトラブルにつながるので注意が必要です。特に、株式を保有している相手に対しては慎重に進めるのが得策です。後継者候補が数人いるケースでは、派閥争いに発展しないように配慮しながら進めましょう。

周囲に相談しないまま事業承継を進める

【事例】
経営者が会社売却という形で事業承継を決定しました。社内のだれにも相談せず、独断で会社を売却したため、従業員は知らないうちに自社が事業承継されているという状況になりました。

経営者の独断で進めた結果、従業員の多くは強く反発し、会社を離れてしまいました。最終的に会社は廃業、売却先の会社ともトラブルに発展してしまいました。

【対処法】
独断で会社の進退を決定することは経営者の特権ではありません。特に事業承継は会社全体の将来に関わる重要な要素です。社内周知の徹底や、必要であれば関わる人たちの意見の聴取を行い、納得してもらいましょう。より円滑に事業承継させるのであれば、周囲への相談に加え、事業承継やM&Aの専門家にも相談を検討しましょう。

事業承継が失敗するとどうなる?

事業承継が失敗するケースはさまざまな要因がありますが、実際に事業承継が失敗することで企業にどのような影響が出るのかをご紹介します。

事業承継が失敗すると、会社には以下のような問題が起こると想定されます。

・廃業に追い込まれる
・業績が悪化する
・退職者が増加する
・資金繰りが難しくなる

それぞれの問題について、どのようなものなのか、なぜそのような状況になってしまうのかを解説します。

廃業に追い込まれる

一番避けたい事業承継の失敗は、廃業に追い込まれることです。事業承継を行いたいと考えている理由の一つとして、事業承継を通して業績を改善したいと思っている経営者の方も多いでしょう。うまくいけば想定通りシナジー効果による事業拡大ができる一方で、円滑に事業承継ができなかったり、期待していた相乗効果が見込めなかったりすると、事業の衰退を招く恐れがあります。

長期にわたって成長させてきた事業が廃業してしまうのは、現経営者にとっては避けたいことでしょう。事業が継続するよう、良い事業承継先を見つけることが大切です。

業績が悪化する

事業承継による廃業を避けられたとしても、業績が悪化してしまう可能性もあります。事業承継の目的が業績改善であった場合、後継者の力量や承継時期のタイミングによっては思惑どおりに進まないケースも少なくありません。

事業承継がうまくいかない一番の理由は準備不足です。まずは、事業承継の準備には時間がかることを認識しましょう。勢いや見切り発車で動き出してしまうと業績改善どころか悪化の一途をたどる可能性もあるため、十分な注意が必要です。

退職者が増加する

事業承継の失敗により、退職者が増加するケースも考えられます。従業員が会社を離れる理由はさまざまです。例えば、経営者の変更と同時に経営方針が変わり、新しい経営方針に賛同できない場合があります。経営者が代わった途端、一気に社内改革を進め、急な変化を求めすぎた結果、従業員が混乱して退職者増加に至ったということもあります。

また、事業承継による業績悪化が原因で人件費が削られ、会社を去る決意をする従業員もいるでしょう。会社にとって人材は重要な財産です。人財に見放された会社は、事業の生産性低下を免れません。事業継続のためには、従業員の流出を防ぐ必要もあるのです。

資金繰りが難しくなる

事業承継が失敗した場合、資金繰りが難しくなる可能性もあります。事業の業績不振が続いてしまうと、金融機関からの融資を受けられず資金繰りが難しくなります。資金調達が困難になれば、事業承継によるシナジー効果や事業拡大どころの話ではありません。

資金繰りが難しくなる理由として、金融機関から融資を受けようとしたが事業内容をうまく説明できないという、後継者の知識不足も挙げられます。些細な要因から事業承継の失敗につながらないよう、綿密な計画が必要です。

事業承継が失敗しないために必要なポイント

事業承継に失敗しないためにはどうしたらよいのでしょうか。失敗する事例から、必要なポイントを解説します。

後継者にしっかりと意思を確認する

事業承継の中でもっとも重要なことは、後継者にしっかりと意思を確認することです。後継者は創業者が培ってきた事業を持続・発展させ、なおかつ従業員の生活も守る必要があります。生半可な決意では任せることはできません。経営者としてどのように事業を継続させていく必要があるかを伝え、本人の意思を確認しましょう。

事業承継先を選定し、承継する意思を確認した後は、時間をかけて引継ぎを行う必要があります。場合によっては後継者を養成する必要もあるため、長期的な計画を立てることが大切です。

経営者は早めに引退予告を行う

経営者自身が健在の場合、つい事業承継のことは後回しになりがちです。しかし、事例でもあったように限界まで働いて病気や急死などに至り「後継者が決まっていない」という状況は避けなければいけません。

事業の継続を最優先に考えるのであれば、後継者を選定し早めの引退予告を行うことが重要です。後継者との並走期間を設け、着実に事業承継を進めましょう。

引退前から後継者に経営経験を積ませる・任せる

経営者が引退する前から、後継者に経営経験を積ませることも事業承継を成功させるポイントです。会社経営の経験がないまま経営者になると、うまく運営できず業績を悪化させる可能性が高くなります。今まで事業を牽引してきた経営者自身が、身近で経営を体感させることで事業承継後の経営の安定性も高められるでしょう。

事業承継計画をしっかりと作成する

事業承継計画書とは、中小企業向けに円滑な事業承継を実現させるために中小企業庁が推奨する計画書を言います。

事業承継計画は後継者と事業方向性などの認識をすり合わせるために有用な書類です。作成しておけば、いきなり事業承継しなければならない事態に陥った場合でも、計画がない場合に比べればスムーズに事業承継ができるでしょう。

節税・相続税の対策をしておく

事業承継には贈与税や相続税が必要になるケースも少なくありません。対策を怠ると、納税で資金が底をつき、事業承継がうまくいかないこともあります。「相続時精算課税制度」や「不動産購入による自社株の評価額引き下げ」などの節税対策も事前に確認しておきましょう。

親族間での相続により事業承継を行う場合は相続税が発生するため、相続税対策も必要です。相続には親族内の争いなどトラブルに発展する可能性もあります。事業に影響が出ないよう、あらかじめ親族内で話し合いの機会を持つと良いでしょう。

【まとめ】

事業承継を成功させるためには、失敗してしまう原因を知り、事前に対策を行うのが効果的です。しかし、経営者の方がひとりで事業承継を進めるには限界があるでしょう。事業を継続させる事業承継を円滑に行うのであれば、プロに相談しアドバイスをもらうことをおすすめします。

GCAサクセションには事業承継に特化した専属アドバイザーが多数在籍しています。親族や従業員、第三者への事業譲渡などさまざまなケースの事業承継において実績を持っているため、事業承継を行いたいと考えている経営者の方のご要望に合わせて、最適なサポートをご提示できます。
事業承継に悩んでいるなら、ぜひGCAサクセションへご相談ください。

記事監修

HLサクセション株式会社は、オーナー様企業における事業承継案件に特化した代理人型M&Aアドバイザリー会社です。「お客様の最善の利益のために」、オーナー様専属のアドバイザーとして、クライアントのご意向に沿ったM&Aの実現を徹底的に追求いたします。

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