●インタビュー企画● ここが知りたい!中小企業のM&A 第7弾~蔦茂旅館の事業承継

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  • 事業承継コラム

中小企業のM&A事例第3弾 蔦茂旅館の事業承継

事業承継M&Aに関するインタビュー企画第7弾は、名古屋の老舗料亭「蔦茂(つたも)」を2019年秋に食品製造販売会社「デリカスイト」に譲渡された、蔦茂の深田正雄会長にお話をお伺いしました。1913年に旅館として開業し、財界人にも愛されてきた伝統の料亭を次の世代へ残すため、後継者不在のお悩みを抱えながらM&Aに至った経緯や、事業承継後のご活躍などについてお聞かせいただきました。ご同席いただいたのは、蔦茂の事業承継アドバイザーを務めたGCAサクセションの二戸弘幸取締役社長とヴァイスプレジデントの田中隼亮部長です。(文中敬称略)

01. 後継者不在でものれんはM&Aで守る!老舗料亭三代目の決意の理由は?

まず、後継者不在への懸念をいつ頃から感じていらっしゃったのか、お教えいただけますでしょうか?
深田
後継者不在の懸念は、親族が事業承継に興味を持ってくれない寂しさと同時に、ずいぶん前から感じておりました。
 私は、蔦茂の経営に携わる以前は繊維会社を経営していました。その会社は従業員に譲渡し、経営と不動産所有を分けることで現在も良い形で運営できています。そのような形の承継が理想的でしたから、蔦茂も当時の調理長への譲渡を考えていたところ、2006年に料理長が逝去してしまいました。新たに料理長を引き継いだのは前料理長が育ててくれた若い料理人で、経営感覚が身に付くよう真剣に指導しましたし、彼も熱心に勉強してくれていました。ところがその料理長も2014年に交通事故で急逝してしまったのです。それはそれは大変なショックでしたし、お先真っ暗になってしまいました。
 祖父が創業し、三代目である私も大切に育ててきた料亭蔦茂でしたから、長年一緒に苦労し、私の経営理念や考え方などを理解してくれる人材に継いでもらうのがベストと考えていました。しかし親族が承継を望まないのなら、第三者への譲渡を検討するしかありません。そこで、5年ほど前から第三者に承継できるよう体制を整え始めました。まずは店舗を移転し、女将がいなくても運営できるような体制を考え、事業領域の拡大の道を模索し始めたのです。
第三者への譲渡を視野に段階的に体制を整える、その第一段階としてまず料亭を移転されたわけですね。
深田
そうですね。前の立地もとてもよかったのですが、あまりにも広すぎましたし、著しい老朽化で自然災害に対する不安もありました。そこで、その土地を売却した資金でコンパクトな運営に切り替える準備をしていったのです。
 前の店舗は料亭風情が強く、女将の存在が大きかったのですが、移転から半年ほどで女将が常駐しない店にしました。それと同時に、座敷でお酌をしたり、芸者をあげたりする旧態然のシステムも廃止。そういった接客のシンプル化は、M&Aの上でもポイントになったと思います。
10年ほど前からお弁当事業にも進出されていますが、なぜ事業領域の拡大も試みることにしたのでしょう?
深田
事業を第三者にお任せする前に、長年続いていた蔦茂ブランドを継続して育て、蔦茂の商品価値を上げておくことが大切なのではないかと考えたからです。そして、蔦茂ブランドをさらに活かすには、料亭だけでなく幅広いマーケットに出ていく必要もあるのでは…そのような思いから、弁当や惣菜などを百貨店で販売する事業をスタートさせました。また、販路の拡大に備え、4年ほど前にはセントラルキッチンも整備しました。
田中
セントラルキッチンの整備には、将来の事業承継M&Aを見据えて、譲渡しやすい環境を作るという意味もあったのですね。
深田
企業価値を高めるという目的があったのです。でも実は「料亭だけでは存続が難しいから、お弁当やお惣菜などの販売も始めては?」と最初に提案したのは家内です。できるかどうか不安でしたが、将来を考えると今チャレンジするしかないと思いました。
 そういった新ビジネスが動き出したことで、蔦茂の魅力は高められたと思います。また、それまではあまり積極的にPR活動をしてきませんでしたが、テレビに出たり、新聞に取材してもらったりとマスコミも活用するようになりました。弁当や惣菜は、地産素材を使った美味しいお料理を手軽にお楽しみいただくものですが、それと同時に文化的な話題を発信していくことで、自然と蔦茂のブランドイメージが向上しましたし、より多くのお客様からの温かいご支援もいただけるようになりました。
事業承継M&Aを決意するに至った背景には、どのようなきっかけがあったのでしょうか?
深田
具体的な動き出し以前から、M&A仲介会社からは多くの営業が来ていました。また、4年ほど前には異業種交流会で知り合った方のM&Aセミナーや事例研究会などに足を運び、そこで事業承継M&Aに関する知識を深めると同時に、自分のこととして意識するようになりました。
今回の事業承継M&AはGCAサクセションにアドバイザーをご依頼されましたが、仲介型M&A会社から多数のお声掛けがあった中でなぜ片側アドバイザーをお選びになったのでしょうか?
深田
兼ねてからM&A業界で主流の仲介=双方代理という仕組みはおかしいと感じていました。セミナーを受講したときにも、このシステムでは売り手と買い手が両天秤にかけられて、仲介会社の都合で早く話をまとめられてしまう可能性があるのでは、と感じました。後々、ちょっとしたことでもトラブルになりそうな印象だったのです。
 その点、GCAサクセションという代理人型アドバイザーのM&A会社の存在を知り、嬉しく思ったことを覚えています。
二戸
最近では、経済産業省などからも利益相反に注意すべきといった主旨のアナウンスが出されるようになりました。
深田
裁判で原告と被告の代理を同じ弁護士がしているようなものですからね。
二戸
訴訟が当たり前の海外ではあり得ないシステムですが、日本では慣習として古くから続いてきているのが現状です。
田中
売り手側アドバイザーとして買い手候補企業にご提案をお持ちすることが多々ありますが、私たちは売り手側アドバイザーである以上、買い手から手数料などを取ることはあり得ません。それに驚かれる買い手候補も多数いらっしゃいます。事業承継M&Aの世界では、仲介による成立が圧倒的に多いので仕方ありませんが、仲介会社とのお取引きしか経験したことがない方の多くは、双方に料金が発生することを当然と思っていらっしゃるようです。
深田
おかしいシステムですよね。そう思っていたところで出会ったのが、GCAサクセションだったわけです。

02. もともと関心があった譲渡先候補。そこに決定した「決め手」は?

第三者への事業承継に際して、譲れなかったポイントはどのようなものだったのでしょうか?
深田
もっとも大切なポイントは雇用の維持でした。また、蔦茂というブランドを守るとともにその価値を高め、それを活用していただけることが期待できる譲渡先が望ましいと考えていました。
 蔦茂は名古屋の繁華街にあり、不動産価値を目当てにしている譲渡先はお断りしたいとも考えていました。実は、価値が大きい不動産と蔦茂の営業、2つを分離した形でのM&Aも考えなければいけないのでは、と思っていた時期もありました。
事業への理解がある同業の事業会社を承継先として考えられていたのですね。
深田
そうですね。蔦茂を買ってその不動産を活用してビルを建て、商売のほうはいい加減というケースが一番恐ろしかったものですから。
田中
そのような懸念を最初から断ち切るため、GCAサクセションとしてもまず、名古屋周辺にあり、かつ蔦茂ブランドをよく理解して守っていただけそうな会社を譲渡先候補としてリストアップしました。そして、雇用の維持だけでなくブランドの継続も譲渡の前提条件として明示しました。
最終的には岐阜県大垣市のデリカスイトへの譲渡を決定されましたが、決定の要因はどこにあったのでしょう?
深田
ホテル経営に携わった経験から、私には「商売を成功させるには立地している地域をよくしていくことが大事だ」という信条があります。蔦茂でも私の仕事の大半は街づくりでしたし、ビジネス環境をよくしていくことに注力してきたのは、その信条に基づいています。これまで街づくりに関して「話を聞いてほしい」「このアイデアはどうだろう」といった相談を各方面からいただいてきましたし、岐阜県へも頻繁に足を運んでいました。
 デリカスイトの創業者の堀冨士夫ファウンダーは、大垣の街づくりに大きな貢献をされてきた方です。街の魅力を高めるための活動に尽力されていることは兼ねてから存じ上げておりましたし、素晴らしい方だとつねづね感銘を受けていました。
事業承継M&Aが具体化する以前から、堀ファウンダーのことはご存知だったのですね。では、デリカスイトと蔦茂の経営統合には、どのようなシナジーを期待されていたのでしょうか?
深田
実は、弁当事業で以前賃借していたセントラルキッチンが手狭になった際、業務委託先としてデリカスイトが候補に上がり、工場を見学させていただいたことがありました。とてもいい会社で、こういう会社と一緒に事業をしたいと考えたこともあったほどです。残念ながらその時の業務委託の話は実現しませんでしたが、衛生管理、生産管理、労務管理などに秀でたデリカスイトには、とても好印象を持ちました。
 他方、デリカスイトにとって蔦茂は、大都市名古屋の老舗ブランドとして魅力的だったと思います。地産食材を使い添加物を使わず出汁を大切にする、そういったコンセプトも共通していました。蔦茂のように小さい企業にとって弁当・惣菜事業には超えられないハードルがありましたが、デリカスイトは専業会社ならではのノウハウやスケールメリットをお持ちです。そして、蔦茂の名古屋におけるプレゼンスは、デリカスイトのマーケット拡大に貢献できる可能性がありました。それらの点を鑑みると、大きなシナジー効果が生まれる可能性が感じられました。
デリカスイトに経営を譲渡され、蔦茂にはどのような変化がありましたでしょうか?
深田
後継者不在で不安に思っていた社員は、大いに安心したと思います。私自身、このM&Aがなかったら事業継続を諦めていたかもしれません。その結果として、社員や地域の方々にも不便な思い、残念な思いをさせてしまっていた可能性もあります。デリカスイトという強力なバックアップを得たことで、私自身も社員も安心して働けるようになりましたし、地域の方々も「よかったね」と声を掛けていくださいます。
 コロナ禍の影響でマーケットが大幅に縮小してしまった現在は、残念ながらまだ具体的な成果は出ていません。しかしコロナが一段落すれば、期待していた効果が出るのではと楽しみにしています。
社員の皆様にはいつ、どのような形でデリカスイトへの事業譲渡をお伝えしたのでしょうか?
田中
クロージングの数日前だったと思います。蔦茂の一番大きな部屋に社員の皆様にお集まりいただき、従業員説明会を開きました。そこでは、デリカスイトの堀富則社長からもご挨拶をいただきました。
 説明会では特に質問もなく、粛々と進んだ印象でしたが、実際の皆様の心情はどのようなものだったのでしょう? お手伝いさせていただいた私も気になっていました。
深田
社員さんたちは自分の会社のM&Aなど考えたこともなかったでしょうし、説明会では理解しきれなかったと思います。ですから、幹部には個別に理念や思いを伝え、ブランドや雇用の維持などについて説明しました。そして最終的には、後継者不在という一番の不安が解決できるとわかり、納得してくれました。もちろん、譲渡後の意識改革は大変だったと思います。しかしデリカスイトから素晴らしい経営スタッフが来て、社員の不安や心配事にも耳を傾けてくださっています。とても有難く、嬉しいことです。
事業承継M&Aの話が進んでいることを事前にご存知だった方はいらっしゃいましたか?
深田
私と家内しか知りませんでした。GCAサクセションとは電話やファックスなどで頻繁にやりとりしていましたが、周囲は気付いていなかったと思います。
デューディリジェンスの資料なども深田様ご自身でご準備されたのでしょうか?
深田
周囲に悟られないよう書類を作る必要がありましたから、仕方ありませんよね。田中さんのチームが細かい部分までサポートしてくれましたし、会計事務所もよくやってくれました。おかげさまで蔦茂の事業内容や財務情報を取りまとめた企業概要書も素晴らしい出来栄えで、蔦茂の魅力が伝わる資料になっていたと思います。

03. M&Aには苦楽がつきもの。でもその先には社員や地域の幸せが

M&Aプロセス中、嬉しかったエピソードなどをお聞かせいただけますか?
深田
蔦茂のブランドに関心を示してくださる会社があったときには、心から嬉しく思いました。蔦茂がある栄は、20年ほど前まで治安が悪くてちょっと怖い印象のある「あぶにゃあ街」だったのですが、健全化して豊かになりました。地域を大切にしてきた蔦茂は「安心安全な栄ミナミ」のランドマークのひとつと捉えていただけたのだと思います。
 また、親族を安心させられたことも嬉しかったです。セントラキッチン事業も、まだ利益を上げるほどの段階に達していませんでしたから、親族はホッとしたと思います。
 当初、蔦茂のような小さな会社をGCAのような大手M&A専業会社が扱ってくれるとは思ってもいませんでした。ところがGCAサクセションという事業承継M&Aの専業会社ができ、細かいフォローもしてくださいました。これは中小企業にとって大きな励みになりますし、自信にもなります。実務では大変なご苦労をされたと思いますが、GCAサクセションのような会社の存在は、社会的に大きな意義があると思います。そういう会社に出会えたこと、これも嬉しかったことといえるでしょう。
田中
そうおっしゃっていただき嬉しい限りです。ありがとうございます。
逆に辛さを感じた場面はありましたでしょうか?
深田
M&Aの件を人に話せなかったことが一番辛かったですね。書類管理なども人に任すことができなかったですし。また、興味を示してくださった他の企業様にお断りをしなければいけなかったことも辛かったです。
 街づくりや地域活動に携わっていましたから、最初は周囲から「店を売っちゃったのか」「いなくなっちゃう気か」「新しいビルでも建てるのか」とさんざん言われたことも心が痛む思い出です。ですが、大手新聞各社に取材をお願いして事業継続をアピールし、最終的には皆様にご理解いただきました。マスコミの力は大きなポイントになったのではないでしょうか。新聞の一面に掲載されたことでブランド価値が上がりましたし、承継したデリカスイトもやりやすかったと思います。
事業承継M&Aを終えて、GCAサクセションの働きについてご感想をいただけますでしょうか?
深田
GCAサクセションの方々は、私共の事業をよく理解してくださいましたし、それを的確に譲渡先候補に伝えてくださいました。そして何より、スピード感がよかったです。資料作成は大変でしたが、スピーディに話を進めることができました。
田中
2019年春にスタートし、同年10月にクロージングに至りました。とてもスムーズに進めることができた案件だったと思います。
深田
繰り返しになりますが、やはり双方代理は絶対に良くないと思います。話が進んでいる最中は気づかないかもしれませんが、後になって契約を急ぎすぎたと感じるオーナーもいるのではないでしょうか。その点、GCAサクセションは早いけれどもきちんと売り手側のことを考えてくれています。無理難題をお願いしたときも、何とか解決してくれました。
マネジメントインタビューは名古屋で実施されたのでしょうか?
深田
堀社長や事業部の方々、買い手側の専門家の方々も同席されて、名古屋で実施しました。また、デューディリジェンスの専門的で細かい質問に回答する実務者セッションにも堀社長ご自身が毎回ご出席され、熱心に耳を傾けてくださり、熱意や誠実さを感じました。
面談などを通じて、デリカスイトの印象はいかがだったでしょうか?
深田
蔦茂の前にも岐阜市にある料亭「ひら井」を買収された経験をお持ちのデリカスイトは、M&Aに慣れていらっしゃる印象でしたね。
 デリカスイトに対する第一印象を正直に申し上げますと、まず、勉強熱心で真面目な創業者のご長男が社長として経営を引き継ぎ、若い力を発揮して活躍されていることを羨ましく思いました。後継者としてご子息に経営を任せられるというのは、社員も安心するでしょうし理想的です。また、新しいことにもチャレンジしている姿が素晴らしいと思いましたし、譲渡後もさまざまな面で応援させていただきたいと思える会社でした。

04. 経営から退いても愛着のある街は育てる!地域活動などに奔走する毎日

M&Aを終えて会長にご就任され、深田様ご自身の活動にはどのような変化がありましたでしょうか?
深田
活動としてはあまり変わらないのですが、経営から退いたことで気持ちが楽になりました。もしもあのときM&Aが成立しなかったら、あるいは成立しない段階でコロナ禍を迎えていたら、今ごろ命が擦り減っていたでしょう。デリカスイトのバックアップの元で蔦茂のブランドを守ることができ、今は本当に良かったという思いです。
 現在の仕事は、蔦茂を経営していたときと同様、地域活動など社会貢献に力を注いでいます。また、地域団体やサークルなどに家内ともども積極的に参加し、PR活動を続けています。蔦茂のホームページや自分のフェイスブックも活用した、広報担当マネージャーのような活動もしています。蔦茂には、料亭のグリーターもしくはメートルディという立場で関わっています。蔦茂の会長という役職ではありますが、今でもお客様の多くが私の知人ですから、従業員もそのほうがやりやすいのではないでしょうか。
深田様のホームページは、事前に拝見させていただきましたが、多方面の方々と活発に交流されているご様子がとても印象的でした。
深田
ホームページなどを見ていただくとわかるとおり、レジャーに費やす時間が増えたことも変化といえます。以前は趣味の渓流釣りへ行っている最中でもお店から電話がかかってきていましたが、今は集中して楽しめています。
田中
日常的な対応は、デリカスイトから就任されたスタッフの方にお任せされているのでしょうか?
深田
そうです。しかも彼らの運営になってからはトラブルが減りました。弁当事業では、料理屋がやるのと仕組みが整った企業がやるのでは大違いです。そういうきちんとした体制に対する憧れもありましたから、とても頼もしいパートナーです。今はコロナ禍の影響で大変だと思いますが、マーケットが回復した後、デリカスイトと共に蔦茂ブランドが本格的に展開されることを心待ちにしています。
譲渡後は、奥様と過ごされる時間も増えたのではないでしょうか?
深田
そうですね、家内とは前よりもいっそう仲がよくなりました。
最後に、事業承継にお悩みの老舗企業のオーナー様に向けて、ご経験を踏まえたアドバイスやメッセージをお願いいたします。
深田
料亭という珍しい業態でもM&Aができるわけですから、あまり固定観念を持たずに、まずは専門家の話を聞いたり、勉強してみることが大切だと思います。
 経営の難しさや大変さがわかっている身内への事業承継は難しいものがあります。しかし、我々のような事業は次世代に残していくべきだと考えています。老舗ののれんは、オーナー個人のものではなく、社会的あるいは地域にとっての大きな財産ですし、オーナーはのれんも社員も守らなくてはいけません。さらに、事業を譲渡するうえでは、買い手にとって魅力がある“何か”を残すことも大切だと思います。
 跡継ぎがいないことを理由に廃業するのは最後の手段ですから、その決断をなされる前にいろいろな可能性を探っていただきたいと思います。この記事に興味を持った方で専門家に相談することが憚れる方は、私にご相談いただいても構いません。まだしばらくは蔦茂におりますので、プライベートなご相談でもお受けできると思います。
田中
頼りになるお言葉をありがとうございます。事業承継のプロセス中で、人に話せなかったことが辛かったと仰っていましたが、周囲の人になかなか相談できないことだからこそ、私共のような専門家に頼っていただけると有難いです。
 ところで、深田様は経営から退かれて、若返られましたね。
深田
おかげさまで今はとても幸せな人生です。楽しみもますます増えました。時間ができたので、ここ半年くらいは地域の本を編集しています。夏頃には出版する予定で、いまは最終作業を楽しんでいます。
 また、蔦茂出身の板前さんたちがやっているお店があちこちにあり、そこを訪ねる時間もできました。蔦茂を経営している時にはできなかったことですから、とても嬉しいですし、楽しみです。
二戸
GCAサクセションは会社の規模に関わらず、その会社の歴史や文化をきちんと引き継いでくださる譲渡先を探すこと、ご相談いただいたお話は全て責任を持って対応することを目的に設立した会社ですので、事業承継にお困りの方がお近くにいらっしゃいましたら、ぜひまたお役に立ちたいと思います。
 本日は長時間のインタビューにお答えくださり、ありがとうございました。
深田
こちらこそ。今後ともよろしくお願いいたします。
コロナ禍に見舞われる以前に事業承継M&Aを終えられて、ご自身の時間を大いに楽しまれている深田様。第三者譲渡を見据えた改革や新規事業への進出といった前向きな行動を重ねられた結果として、納得のいく事業承継になったことが感じられました。
 老舗の料亭ののれんと味を守り続けるために、深田様は多くの時間と労力を割かれてきたことでしょう。その第一線から退かれてもなお社員のことを考え、譲渡先であるデリカスイトの成長にも腐心されていらっしゃるお姿が印象的でした。と同時に、日頃から周囲の方々と良好かつ信頼できる関係を築いておくことは、事業承継M&Aの大きな武器になることを勉強させていただきました。
 深田様は、引き続き蔦茂でお客様を温かくお迎えしながらも、趣味の渓流釣りや地域活動などでアクティブな毎日を送られているとのこと。そのご様子はブログ(http://tsutamo.com/fukada/fukadax.htm)からも伺えますので、皆様もぜひアクセスしてみてはいかがですか?(文:玉野菜穂)

二戸 弘幸(にと ひろゆき)

GCAサクセション取締役社長。信州大学卒、1986年に山一證券入社、日興証券、大和証券等を経て、2014年よりロスチャイルド・ジャパンにて国内M&Aを担当、マネージング・ディレクター等を歴任、2018年GCA入社。1990年からM&Aアドバイザリー業務に従事し、食品や化学、流通、物流業界を中心にオリジネーションからエグゼキューションに至る案件責任者として国内外の数多くのM&A案件を成約させてきた実績を持つ。特に食品と流通業界においては大手企業の経営統合、企業再生等を通じて業界再編を主導。M&AファイナンスやIPOなどの実務経験、中小企業管轄官庁による中小企業・ベンチャー企業の支援実績も多数。

田中 隼亮(たなか としあき)

GCAサクセション ヴァイスプレジデント。慶應義塾大学卒。日系証券会社のM&Aアドバイザリー部門を経て2016年GCA入社。約10年にわたりM&Aアドバイザリー業務に従事。大企業による海外案件を含む企業買収・売却、事業承継を伴う株式売却やMBO等、国内外の幅広い分野でのM&Aオリジネーション・エグゼキューション業務に関与。GCAサクセション発足後は、これまでの知見を活かしオーナー企業の事業承継案件の開拓・エグゼキューションに注力している。趣味は登山とギター。好きな食べ物は甘いもの全般。

記事監修

HLサクセション株式会社は、オーナー様企業における事業承継案件に特化した代理人型M&Aアドバイザリー会社です。「お客様の最善の利益のために」、オーナー様専属のアドバイザーとして、クライアントのご意向に沿ったM&Aの実現を徹底的に追求いたします。

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