M&Aの「ディール」とは?言葉の意味、全体の流れやそれぞれのプロセスについて紹介

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M&Aの「ディール」とは?言葉の意味、全体の流れやそれぞれのプロセスについて紹介

M&Aとは、Merger and Acquisitions(合併と買収)の略です。現在は、新しい事業を立ち上げる場合に、一から会社を立ち上げるのではなく、既存の会社とM&Aを行うことで事業を拡大させるケースが増えています。

M&Aにおける「ディール」はM&Aの準備から統合までの一連のプロセスを意味します。このプロセスをどう構築するかがM&Aが成功するかどうかの決め手になるでしょう。

この記事では、ディールの流れや用語の解説、それぞれのプロセスのポイントを紹介します。

M&Aのディールとは?

前述したようにM&Aのディールとは、M&Aにおける準備・戦略・ターゲット企業の選定・成約までの一連の過程を指します。

多くの場合、M&Aを行う準備段階からM&Aの実行、クロージング(M&A取引の完了)、買収後の経営統合作業(PMI)までディールに含めます。そのため、ディールが適切に進められるかどうかがM&A成功の鍵を握るといってもいいでしょう。

M&Aにおいては「ディール」のように独特の用語が多数存在します。また、ディールのなかでも独特のM&A用語が多数出てきます。M&Aにおいては避けて通れない部分でもあるため、言葉の意味を理解することも大切です。

ディールに関する重要なM&A用語5選

ここでは、ディールに関するM&A用語を5つ紹介します。これを知っておくだけでも、ディールの解説がぐっと分かりやすくなることでしょう。

①ディールサイズ

ディールサイズとは、M&Aにおける取引(売買)金額の規模を表す用語です。ディールサイズには「小規模案件」、「中規模案件」、「大規模案件」の3種類に分けられます。

小規模案件は、取引額が1億円以下、中規模案件は数億円~数十億円規模、大規模案件は数百億円規模のディールとなります。

かつて、M&Aといえば大規模案件がほとんどでした。しかし、現在は小規模~中規模案件のディールサイズが増えています。

②ディールメーカー

ディールメーカーとは、M&A アドバイザー(代理人型)などの専門家や企業買収を仕掛ける買い手を指します。M&Aを行う際、企業の選定や成約まで一連の流れをサポートしてくれます。M&Aアドバイザーではなく、M&A仲介会社に相談する場合、彼らは買い手と売り手両方の仲介人となり、双方の条件や希望を聞きながら着地点を探っていきます。一方の代理人型アドバイザーは、売り手企業の代理人として、売り手企業だけにアドバイスし、買い手サーチ・打診及び条件交渉をする立場です。

M&Aをスムーズに行うには知識や経験が必要です。信頼できるプロのサポートがあれば、スムーズに取引が行えるだけでなく、安心感もあるでしょう。

③ディールブレーカー

ディールブレーカーとは、M&Aがご破算になりかねない重大な問題を指します。

ディールブレーカーは、主に買い手側が売り手側に買収監査(デューデリジェンス)を行った際に発覚します。一見、買収監査が悪いようなイメージがありますが、ディールブレーカーが判明していないままM&Aを実行してしまうと、後々ややこしい問題になってしまう可能性もあります。そのため、M&Aが実行に移される前にディールブレーカーを発見するのが理想です。

ディールブレーカーを明らかにするためには、買収監査(デューデリジェンス)を入念に行う必要があります。デューデリジェンスには、財務・法務・ビジネス・人事など、多岐にわたります。

④プレディール

プレディールとは、交渉の前段階を指します。買収する企業の選定やM&A戦略の策定、資料の準備など、すべてプレディールに含まれます。

M&Aにおける交渉は、M&Aにおける条件や締結後の従業員の待遇に関わるため、相手のことを入念に調べた上で臨む必要があります。そのため、プレディールがどのくらいしっかり行えるかで、本番のディールがスムーズに進むかどうか決まるといっていいでしょう。M&Aアドバイザーなど専門家を活用する重要な段階ともいえるでしょう。

M&Aディールの手順とは?

実際にM&Aはどのようなディールで行われるのでしょうか?以下に、ディールの代表例を詳細に紹介します。

プレディール

まずは、プレディールを行います。

前述したように、ディールがスムーズに行くかどうかはこのプレディールをどれほど丁寧に行うかどうかで決まるでしょう。以下に、プレディールで何を行うかを解説していきます。

M&A戦略や目標を策定

まずは、何のためにM&Aを行うのか、目的や目標を明確にします。

たとえば、「新しい事業を即スタートできるように企業を買収したい」「経営統合をしたい」というような内容が目的に当てはまります。

目的が決まれば、どのような企業をどのような手段でM&Aをすればいいのか戦略が定まることでしょう。

M&A専門家への相談と依頼

M&Aをスムーズに行いたいならば、プレディールの段階でM&Aアドバイザーなど専門家を頼りましょう。

大多数の企業にとって、M&Aは不馴れなものです。プレディールの段階から専門家の意見を取り入れて戦略を練っていったほうが、時間も手間も節約できます。

ターゲット企業を選んでいく

M&Aの目的や目標が明確になったら、それを叶えてくれるためのターゲット企業を選定していきます。M&Aアドバイザーなど専門家の意見を参考にターゲット企業を選んでいきましょう。

なお、最初からターゲットを絞りすぎると、その企業との交渉が失敗した場合に再度ターゲットを選定しなければなりません。そのため、数社~10社ほど候補をピックアップしておくのがおすすめです。

ディール

プレディールが終ったら、次はいよいよディールに移ります。

プレディールが綿密に作ってあれば、ディールはスムーズに進むでしょう。以下に、ディールの手順を解説していきます。

条件交渉やトップ面談

ターゲットとなる企業が絞られ、具体的な話し合いを進めたいとなった場合、まずは条件交渉やトップ面談を行います。

まず、秘密保持契約書(NDA)を締結してインフォメーションメモランダム(IM)を入手します。秘密保持契約書とは、この話し合いをどこにも漏らさないという契約書です。M&Aを行っていることが外部に流出した場合、株価などに影響が出ることがあるため、秘密保持契約書の締結は必須といえます。IMは、売り手企業の詳細な情報のことです。

なお、秘密保持契約書が締結されていない場合は、「ノンネムシート(ティーザー)」と呼ばれる限られた情報のみが公開されます。

面談はIMを元に行われます。売買金額や従業員の雇用条件、取引先との契約、許認可などまでここで詰めていき、先の交渉に進むかどうかを決断します。

買収監査(デューデリジェンス)を実施

買収監査とは買い手となる企業が売り手となる企業に行う調査です。会社に問題がないか、財務・税務、法務、人事、システム、ビジネスなど幅広い箇所で行うのが理想です。

しかし、買収監査を行うには専門的な知識が必要かつ費用も高額です。そのため、リスクに応じて調査の範囲が決められます。

買収監査は、M&Aに精通した弁護士と公認会計士が行います。M&Aアドバイザーに依頼すれば提携している公認会計士や弁護士を紹介してくれるでしょう。

最終条件の交渉や契約書の作成

買収監査が終わり、買収監査で発見した事項を踏まえ価格や各種条件を反映した最終契約書を締結すれば、M&Aは完了します。

なお、交渉について、M&A仲介会社は、売り手のために交渉をすることはできません。価格や諸条件からなる多方面におよぶ交渉事項は、買い手側と売り手側でメリットデメリットが全く逆の関係となります。よって、買い手側と売り手側の双方と仲介契約を締結するM&A仲介会社が前面で交渉に携わることは利益相反行為となるためです。もし、売り手自らで交渉を行い判断できる状況でないならば、M&A仲介会社ではなく、M&Aアドバイザー(代理人型)への委託を検討する方が良いでしょう。

また、最終契約書を締結した時点でM&Aは9割程完了した状態です。このタイミングでM&Aが行われたことを公表する企業もあれば、念には念を入れてクロージング(M&A取引の完了)まで、M&Aのことを公表しない企業もあるでしょう。公表するタイミングは企業によって異なりますが、いずれにせよ情報が漏れないようにしておくことが大切です。社内でもM&Aの実施を知る人は経営陣など一部にとどめ、相談はM&Aアドバイザーなどの専門家のみにしましょう。

クロージング

クロージングとは、売り手側が最終契約書に織り込まれた条件を満たすために行う行動のことです。

この段階では株式譲渡の準備や許認可の手続きを行います。主に売り手側が行うために買い手側はクロージングが行われた報告を待つだけということもありますが、進捗状況は確認しておくとよいでしょう。

PMIの実施

PMIとは、買収後の統合作業のことです。別名「ポストディール」と呼ばれます。事業統合をしたあと、どのように仕事を進めていけばシナジー効果を最大限発揮できるのかを考える段階でもあり、企業によってはむしろここからが本番といえるでしょう。

せっかくM&A自体は成功したのに、PMIがうまくいかずシナジー効果を発揮できなければ買い手側にメリットはなくなります。M&Aは最終締結をした後から本番と考え、プレディールの時から戦略を練っておくとよいでしょう。

M&Aでディールが失敗する原因は?

ここまでディールの手順を紹介しましたが、実際は全てのディールが順調にいくとは限りません。

ここでは、ディールが失敗する原因を解説していきます。

条件面で擦り合わせが上手くいかない

M&Aは買い手側と売り手側、それぞれに条件を出してそれを擦り合わせながら進めていきます。条件面の擦り合わせがうまくいかないと、当然交渉決裂になってそこでM&Aは失敗に終わります。

企業同士によほどの力の差がなければ、片方がもう一方に無理矢理条件をのませることはできません。トップ面談では合意しても、条件面をお互いに出し合ったら決裂したという例もあるので、最後まで気を抜かないことです。

価値観にズレがあった

企業の価値観や風土があまりにもズレているとM&Aを行ってもうまくいきません。買収後、ことあるごとに衝突し、シナジー効果どころかお互いに悪影響を及ぼしかねません。

企業の価値観や風土は経営陣の考えを知ればおおよそ分かります。あまりにも価値観が違う企業は、いくら条件が魅力的でも候補から外したほうがいいでしょう。

企業同士の統合が難しい

企業同士の統合が難しい場合、シナジー効果を得るまで年単位の時間がかかることがあります。組織文化や業務を進めるプロセスが大きく異なることからコミュニケーションが取れるまでに長い時間がかかり、シナジー効果が生み出せても想定より利益があがらない、といったケースもあるでしょう。

シナジー効果は異なる考え方や場所で働く人間がそれぞれ影響し合って成長し合うことです。お互いの仕事ぶりや考え方が刺激となり、新しい事業が生まれる土壌を作ることができるでしょう。

しかし、思ったよりシナジー効果が得られないと単に組織を肥大化させただけで終ってしまいます。

重大なリスクを発見した場合

買収監査を行った結果、重大なリスクが発見された場合もM&Aが中止になります。

買収監査は、会計士や弁護士を起用してコストと時間を掛けて実施するものであるため、「ここまで話しを進めておきながら」と思うこともあるでしょう。しかし、重大なリスクを抱えたままの統合は、後で事業失敗のもとになる可能性もあります。

重大なリスクを発見した場合は、それまでの交渉にどれだけ時間がかかっていたとしても、ディールを中止したほうがいいでしょう。

業績が悪化してしまった

買い手側、売り手側、どちらでも会社の業績が悪化してしまった場合は、M&Aを行うリスクが高まったり資金を用意できなくなったりします。

会社の業績は急に悪化することもありますし、悪化しつつあることを隠している場合もあります。どちらにしろ、業績が悪化した企業を買収してもメリットはありません。

情報漏洩してしまった

ディールの情報が途中で漏洩すると、お互いへの信用が大幅に下がります。

特に、M&Aをしたうえで上場をする場合は情報漏洩したことで、インサイダー取引の疑惑も出てきます。秘密保持契約書(NDA)を締結する前でも、情報漏洩があったら、その時点でディールは失敗するものと考えましょう。

M&Aのディールを成功させるポイント

一筋縄ではいかないM&Aのディールですが、成功させるにはいくつかのポイントがあります。ここでは、M&Aのディールを成功させるポイントを解説します。

M&Aを行う目的をハッキリさせる

なぜ、M&Aを行うのかその目的をハッキリさせましょう。

事業を拡大させるのか、ターゲット企業の実績や顧客がほしいのかなど具体的な目的があるほど、専門業者もアドバイスしやすくなります。

M&Aアドバイザーはあくまでも契約がスムーズにいくためのアドバイザーだと考え、企業主体で動くようにすることが重要です。

M&Aを行う範囲を選ぶ

M&Aは企業をまるごと買収する必要はありません。目的を達成するのに必要な事業だけをM&Aの対象範囲とすることも検討可能です。

十分な調査をせずに不必要なところも買い込んでしまえば、負債まで引き継ぐ可能性もあります。プレディールを入念に行うとよいでしょう。

相手を尊重してM&Aを進める

買い手、売り手はあくまでも対等です。会社同士の交渉であっても人間同士の話し合いですから、相手を尊重しましょう。「あなたの会社を買収してやる」という態度ではまとまるものもまとまりません。

お互いに譲歩し、納得できる状態にする

「これだけは譲れない」という条件を除いて、相手に譲歩することも大切です。

買い手の要求が100%通るM&Aはほとんどありません。あったとしても、買収された会社の従業員の心象は酷く悪くなるでしょう。譲れない部分を妥協する必要はありませんが、M&A後の発展も考え、お互いに譲り合って納得した状態でM&Aを終えることが大切です。

M&A専門家に相談してみる

ほとんどの会社はM&Aについて不馴れな一方で、M&Aは通常の営業や交渉とは全く異なり、経験と実績がないとなかなかうまくいきません。そのため、企業の選定から話し合い、買収監査までM&Aに慣れた専門家のサポートを受けたほうがうまくいくでしょう。

全ての工程を自社で行えばコスト削減にもつながりますが、専門家の知識や経験を活用することで最善の条件でM&Aができたり、効率よく進められたりといったメリットが大きいため、専門家に相談してみることをおすすめします。

前述の通り、M&A専門家にも仲介会社とアドバイザー(代理人型)ではサポートする立場が異なるため、交渉スタンスの違いをよく理解した上で専門家を選ぶとよいでしょう。両社の違いについては、「M&A仲介会社とは?FAとの違いについて」でご紹介しています。

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HLサクセション株式会社は、オーナー企業の永続的な発展をM&Aの側面からサポートする会社です。

弊社はオーナーの専属アドバイザーのため、仲介型ではなく「代理人型」で事業を行っています。買い手と売り手の双方から費用を戴く仲介会社とは異なり、弊社は相手側から一切報酬を戴かないため、お客様の利益第一のアドバイスと提案を行うことができます。M&Aについて悩んでいる経営者の方はぜひ一度ご相談ください。

記事監修

HLサクセション株式会社は、オーナー様企業における事業承継案件に特化した代理人型M&Aアドバイザリー会社です。「お客様の最善の利益のために」、オーナー様専属のアドバイザーとして、クライアントのご意向に沿ったM&Aの実現を徹底的に追求いたします。

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