「会社を継いでくれる後継者がいない。今後どうしたらいいだろう?」「事業の先行きが不安だ。このままマイナスを膨らませながら経営を続けていくべきだろうか?」そのような悩みを抱えている経営者も多くいるでしょう。
事業経営をしていると、さまざまな理由で経営状況が悪化してしまうことがあります。従業員や取引先の手前、簡単に事業をたたむことは考えられないかもしれませんが、最終手段として廃業を検討せざるを得ないケースはあるでしょう。ただ、事業の継続を検討している場合は廃業を回避する手段もあるので、廃業だけが選択肢だと思わないほうが良い場合もあります。
この記事では、廃業・倒産・閉店の違いや、廃業の具体的な手続き、廃業のメリットやデメリット、そして廃業を避ける方法について紹介していきます。
廃業の定義
廃業とは理由を問わず事業(個人事業)をやめることです。廃業イコール「経営破綻」と考える方もいるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。むしろ、後継者不在などの理由で廃業するケースが増えています。
廃業を決めたとしても、すぐに事業を停止することはできません。法人ならば解散手続きが必要となり、個人ならば廃業届を出す必要があります。また、従業員への配慮も必要になることから、ある程度のリードタイムが必要です。
廃業はその事業を再開しない前提で行うものとなり、その後に後継者が現れたり資金に余裕ができたりしたとしても、それまで積み上げてきたものの継続という形で事業を行うことはできません。
廃業と似た言葉の意味
廃業、倒産、閉店など、似た定義の言葉はいくつかありますが、それぞれ意味は異なります。続いては、廃業と混同されがちな言葉を4つ紹介していきます。
倒産
倒産とは企業が債務を支払えなくなったり、経済活動を続けることが困難になったりする状態のことです。
倒産には法的倒産と私的倒産の2種類があり、さらに法的倒産には再建型の「会社更生法」と「民事再生法」、そして清算型の「破産」と「特別清算」があります。私的倒産には「取引停止処分」と「内整理」があります。
倒産の状況から、破産法に基づいて資産や負債を整理、清算して廃業することを破産と言い、現在では倒産の8割を占める形です。
閉店
複数店舗を運営している企業が、そのうちの一つまたはいくつかの営業をやめることを指します。また店舗運営以外の事業を行っている企業が、店舗営業をやめてその他の事業運営のみに移行する場合も閉店です。
もし、その企業が運営しているのが1店舗のみだった場合は、事業全体を失うことになり、廃業や倒産に該当します。
休業
定休日や臨時の休みの際にも「休業」という言葉は使われます。廃業と似た意味として、企業が法人登記を残したままで事業を一時的に休止することを指します。
休業はいずれ事業を再開することを前提としていますが、そのまま廃業になるケースもあります。休業している間は収入がありませんから、法人税や事業税などがかかりません。税務署や地方自治体へ「異動届出書」を提出し、税金がかからないように処理しておく必要があります。
解散
企業の法人格を消滅させるためには解散手続きが必要です。その上で、企業は清算手続きに移行していきます。つまり、廃業に至るステップの一つが解散ということです。
経営者が解散手続きをする場合もあれば、グループ企業の親会社が子会社を解散するといったケースもあります。後者の場合は、合併などによって屋号などの存在は引き継がれる場合もあります。
解散した企業の清算を行った結果、債務超過などが判明した場合には、改めて「倒産」として扱われます。
廃業をする理由とは?
先述したように、廃業といっても必ずしも資金繰りに困った状況とは限りません。自主的な廃業を選択するケースもあります。続いては、廃業を選ぶ理由について紹介していきます。
資金ショート(支払い不能)
資金ショートとは、手元資金が不足し、銀行や取引先への支払いができなくなる状態です。金融機関等の借り入れに対して返済ができなかったり、手形や小切手の不渡り(債務者から債権者へ額面金額が渡されず決済が完了しないこと)を起こしてしまったりすると、事態は深刻になります。
6カ月の間に2度の不渡りを出すと、その情報は取引銀行を含むその他の金融機関にも伝わり、銀行取引停止に陥ります。2年間は借り入れや当座預金の取引ができなくなってしまうため、倒産は避けられない状況となるでしょう。
また黒字倒産も起こり得ます。売掛金があって帳簿上では黒字であっても、回収されるまでは手元資金が不足してしまう状況です。この状況で支払い不能となってしまうと、黒字倒産となります。
債務超過(赤字経営)
慢性的な赤字経営が続くと債務が資産を上回り、純資産まで切り崩していかざるを得ない状態となるでしょう。そのような状況となれば、直ちに倒産とはならなくても次第に状況が悪化し、やがては倒産してしまう可能性が高いです。
債務超過が続けば、普通は銀行からの融資も受けられません。債務超過がクリアできる見込みがあるか、事業の将来性が高いなど、その後の収益が見込めるならば可能性はありますが、通常は難しいでしょう。
銀行融資が臨めないのであれば、赤字を膨らませないためにも、早めに倒産を選択することで被害を抑えることができます。
ただし、赤字企業であってもM&Aにより売却できる可能性もあります。一時的な投資が理由で赤字になっているならば、その投資が奏功して追々利益が上がることもあるでしょう。また、債務超過しているような企業だとしても、優秀な人材が眠っていることもあります。
そのように赤字になっている理由や、そこに勤めている人材にしっかりと着目してもらえれば、赤字企業を売却できるケースもあるのです。
後継者不在
昨今増えている廃業理由が、後継者不在です。経営が順調であったとしても、経営者が高齢化などで事業を継続できず、その後を継ぐ人材がいないことによって事業が継続できない状態となってしまうのです。
帝国データバンクの「全国企業「後継者不在率」動向調査(2021年)」によると、60歳以上の経営者のうち50%超が将来的な廃業を予定していることがわかりました。このうち「後継者難」を理由とする廃業は約3割にのぼります。
中小企業庁は事業承継がスムーズに進むようにサポートを進めています。同調査によれば、2021年全国の後継者不在率は61.5%で、2011年の調査開始以降もっとも低い結果となってはいるものの、6割以上は何らかの後継者問題を抱えています。
(参考:帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2021年)」)
先行き不安
現在は黒字経営ができていても、今後の見通しや業界の先細り等が不安だという理由で廃業を選択する企業もあります。
特に、昨今ではコロナ禍の影響が大きく出ている状況です。公的補助に助けられ、2020年は倒産件数が前年と比べて減少したものの、出口が見えない状況に心が折れて休廃業を選択する事業者が少なくありませんでした。
休業すれば、また利益を出せる見込みが出てきたときに事業を再開させることができます。ただし、その間の従業員への給与やテナント代などの問題はクリアしなければなりません。
本格的に事業が立ち行かなくなり、債務超過に陥る前に廃業の準備をすることで周りへの迷惑を最小限に抑えたり、自分の資金を守ったりすることもできます。
廃業を選択するメリット
会社がどうにも立ち行かなくなる前に廃業を選択することには経営者の精神的な面や資産面、関係者への影響を少なく抑えられるという点においてメリットがあります。
関係者への影響が最小限に抑えられる
まだ資金的に余力のあるうちに廃業することで、債務の返済を行えるでしょう。
資金があれば、取引先等への負担を最小限に抑えることができるだけではなく、社内の従業員へ給与の懸念も防げます。ただし、廃業後の従業員について、就職先の不安が残ることは心に留めておかなくてはなりません。
これが廃業ではなく倒産となると、話は変わってきます。貸し倒れ状態が生じ、取引先が連鎖倒産してしまうリスクも出てくるため、事業の終了に当たっての処理は精神的にも厳しいものとなっていくでしょう。
資産が残る可能性がある
黒字経営ができているうちに廃業を決断した場合は、従業員や取引先への支払いを済ませたあとに資産が残る可能性があります。
後継者がいない、事業の先行きが見えないなど、商売を続けていく道を開いていくのが難しいときは、早めに廃業の決断をすることで金銭的な余裕を生み出すことができるでしょう。廃業後の生活費として資産を手元に残せて、自己資産を会社の債務の支払いに充てることもなく、引退後の生活や次の事業までのつなぎ資金を得られるのが一つのメリットです。
経営者としての責任から解放される
経営者として会社を運営していくことには、常に多くの悩みがつきまとうものです。従業員とその家族を守ること、取引先との関係を守ること、後継者問題、事業経営そのもののプレッシャーなど、枚挙にいとまがありません。
しかし廃業すればその一切から解放され、大きな肩の荷を下ろすことができます。経営者としての人生を手放す代わりに、ストレスフリーな生活を手に入れられるでしょう。
また、倒産とは異なり資金に余裕があるうちに行う廃業ならば、従業員や関係各所に給与や支払いを済ませてから会社をたたむことができます。そのため、関係者にかける迷惑も倒産のときよりは軽いはずで、廃業後の罪悪感も少なくてすむでしょう。
廃業を選択するデメリット
廃業にはメリットもありましたが、もちろんデメリットもあります。廃業する場合のデメリットは少々重い話題となりますが、廃業を決定する際はメリット・デメリットの双方をしっかりと比較検討の上で行うべきなので、ここで詳しく解説していきます。ぜひチェックしてみてください。
従業員の生活が守れなくなる
資金に余裕を持たせた廃業をし、従業員に対して給与や退職金の支払いができたとしても、従業員は廃業後に仕事を失う可能性があります。すぐに再就職先が決まれば良いですが、現在はコロナ禍の影響もあり、納得のいく仕事が見つからない可能性もあるでしょう。
そうなれば、従業員本人や彼らの家族の生活レベルが落ちたり、引越しを余儀なくされたり、子どもの教育環境に影響を及ぼす事態となると、親の心情としてはかなり厳しいでしょう。
そういった事態を見聞きすることになれば、元経営者としては非常に心苦しく、肩身の狭い思いをすることになるかもしれません。
無形資産をすべて失う
廃業によって失うのは、お金だけではありません。廃業のタイミングによっては、お金は残る可能性がありますが、無形の資産はすべて失ってしまいます。
推し進めてきた事業そのもの、それまで培ってきたノウハウや知識、顧客、人材、取引先、信頼関係などを一切捨てなければなりません。国や自治体から認可を受けて営業していた場合はその許認可も失います。
新たに事業を起こすことができたとしても、すべてをまた1から築き上げていかねばならず、大変な労力がかかります。
手続きに費用がかかる
廃業するためには、いくつかの手続きを行わなければなりません。それらの手続きにはさまざまなお金がかかり、すべて支払うと思ったよりも資金が残らない可能性もあります。必要な手続きと、それらにかかる費用は下記のとおりです。
(1)登録免許税39,000円(登録免許税30,000円+清算人登記にかかる登録免許税9,000円
(2)決算結了登記2,000円
(3)官報公告の廃業公告40,000円程度
(4)専門家への支払い5万円〜30万円程度
(5)事務所や店舗、在庫の処分、原状回復費用
法人が廃業する場合、(1)~(3)までが必要です。この手続きの実行においては、通常専門家の力を借りる必要があるため、(4)の費用も必須でかかると言っても良いでしょう。個人事業主の場合も、廃業を決めたあとで支払いなどについてプロに相談する場合が多いので、(4)の費用は必要です。
また事業の内容によっては(5)に大きな費用がかかることもあり得ます。在庫処分や店舗処分、原状復帰費用などについて、廃業をする前の余裕あるときのうちに、コストを試算しておくといざというときに役立つでしょう。
廃業手続きの種類と手続きの流れ
ここでは廃業を決めたあとの手続きについて説明していきます。債務を支払えるか否かなど、状況によっていくつものパターンがありますので、それぞれ詳しく紹介します。
通常清算(自主廃業)
廃業しても、手元に残った資金や売掛金の回収などによって債務を支払うだけの資産がある場合の清算方法です。このケースでは、裁判所の監督を受けることなく清算を進めていくことができます。
ですが、全額弁済できないことが判明した場合には、特別清算に切り替えて清算を行うこととなります。
手続きの流れ
通常精算の場合の手続きは、下記のような手順を踏んで行います。債権の回収や資産の現金化など、時間のかかるポイントがいくつかあります。もし、これらのステップがスムーズに行えたとしても、清算には最低でも3カ月程度かかるのが一般的です。余裕を持って、清算作業には半年程度かかると見込んでおくのが良いでしょう。
1.株主総会での解散決議
2.清算人の選任
3.廃止届の提出
4.債権の届出
5.財産目録および貸借対照表の作成と株主総会の承認
6.残余財産の換価および債権の回収
7.債務の弁済
8.残余財産の分配
9.株主総会への決算報告と承認
10.清算結了の登記
まずは社内で廃業についてコンセンサスを取り、従業員にもその旨を伝えます。その後、社外取引先や顧客との協議をスタートさせることになります。同時に、税務署などの役所に廃業する旨を申告する諸届出を提出します。そして、会社が保有している債権を回収して現業を完了させます。
定められた清算人は、会社の財産を調査して目録や貸借対照表を作成します。そして、その内容について株主総会で承認を得るのです。
また、目録に記載した財産については、できる限り現金化してしまいます。そして、債務の支払いに充てるのです。残余財産を債権者へ分配し終えたら、株主総会で決算報告をし、確定申告を行いましょう。
最後に清算が終わったことを示す、清算結了登記をすれば手続きは完了です。
特別清算
債務超過がある、またはその疑いがある場合に、裁判所の監督下で清算手続きを行う法的整理です。対象となる会社が株式会社であることと、すでに解散していることが前提となります。
特別清算の場合、倒産と違って破産管財人は介入しません。自分たちで決めた清算人による清算を行える点もメリットです。債権者の協力を得て、一部の債務の免除を受けながら債務の整理を進めていきます。
なお債務超過の疑いがある場合、清算人や債権者、監査役、そして株主も特別清算の申し立てをすることができます。
手続きの流れ
特別清算には協定型と和解型の2タイプがあります。協定型は、債権者集会で決まった内容に基づいて債務の弁済を行う方式です。また、和解型は債務者である経営者が債権者と個々に相談をして、和解契約を結びます。債務者は、その契約に合わせて債務弁済をします。
以下の流れは、主に協定型の特別清算の場合です。
1.株主総会での解散決議
2.清算人の選任
3.廃止届の提出
4.債権の届出(ここまでは通常清算と同じ)
5.特別清算開始の申し立て
6.特別清算開始の命令
7.第一回債権者集会
8.協定案の作成および提出
9.第二回債権者集会(協定の採決)
10.裁判所による協定認可決定
11.弁済
12.特別清算終結決定
特別清算は破産型の清算手続きではありますが、倒産の場合よりも手続きが厳格ではなく、ステップが少なく迅速に処理を行うことができます。
さらに、会社の信用も倒産に比べて傷つきにくい傾向があります。グループ会社の子会社の一つをたたむ場合などにこの方法を用いると、引き続き事業を継続していく他の親会社や他のグループ会社への悪影響を少なく留めることができるでしょう。
特別清算でも債務を完済できない場合は、破産手続へと移行します。
破産
破産は清算型の基本類型で、倒産手続きの一つです。経営状況としては、支払不能または債務超過に陥っており、破産法に基づいて裁判所が選任した破産管財人が法的整理の手続きを進めます。
破産管財人は、債務者の持つ財産や資産を現金に換え、債権者に弁済したり配分したりして清算作業を進めるのが破産手続きです。破産すると、会社や法人は完全に消滅してしまいます。
対象は法人全般と個人で、株主や債権者の同意は不要です。破産した経営者は負債を背負うイメージがあるかもしれませんが、実際にはそうとは限りません。企業=個人ではありませんので、金融機関から企業への融資に対して連帯保証人となっていなければ、破産した企業の経営者が負債を背負ってしまうことはないのです。
破産は裁判所の管理の元、法律に基づいて清算を行います。私的整理では法律の縛りがないために債権者の意見に左右されがちですが、破産の処理の場合はそのようなことがありません。そのため、中小企業においては特に、少額管財を運用することで費用を少なく抑えることが可能です。
手続きの流れ
では、破産手続きの流れについて、見ていきましょう。
1.法律相談
2.破産手続きの依頼
3.書類作成、残務整理・従業員解雇
4.裁判所へ破産の申し立て
5.破産手続き開始決定、破産管財人選任
6.破産管財人との打ち合わせ、資産の換価・回収
7.債権者集会
8.債権者への配当
弁護士に破産手続きを依頼し、受任されると各債権者に受任通知が発送されます。その時点で会社の窓口は弁護士になるので、経営者は債権者から債権回収の催促を受けることがなくなります。これで、経営者のストレスは少し軽減されるでしょう。通常、受任通知を発送する前に従業員の解雇も行います。
破産管財人が選任されると、会社の資産は差し押さえられてしまうため、自分で換金などの処理ができなくなります。債権者も同様で、債務者の資産に手出しはできなくなるのです。
なお債権者集会は、通常破産手続き開始決定から3カ月後に行われます。もし、そこですべてが終わらなかった場合には、再度3カ月後に債権者集会が行われます。
経営者保証債務の整理
中小企業では、経営者が会社の連帯保証人になっているケースが多くあります。その場合、会社が倒産したときには経営者個人が債務を支払う義務を負うことになるのです。しかし、会社が抱えた多額の債務を個人で背負ってしまうと、経営者やその家族が暮らせなくなってしまいます。
そのため、会社が破産して経営者が残りの債務を背負うこととなった場合にも、経営者保証ガイドラインが適用されれば一定条件の資産を残すことができるのです。
経営者保証ガイドラインは法律で定められたものではありませんが、3つの要件が定められています。債権者などの関係者が経営者の状況を鑑みて、適用するかどうかを決めます。その結果、自由財産として99万円まで、さらに一定期間の生活費(最大360万円)、「華美でない自宅」を残せる可能性があるのです。
経営者保証ガイドラインについての詳細は中小企業庁の「経営者保証のガイドライン」を確認してみてください。
経営者保証が事業承継の妨げになる要因の一つでもあると言われています。経営者保証は、事業を継ごうと考える人にとって、大きなリスクとなり得るからです。
(参考:中小企業庁「経営者保証のガイドライン」)
私的整理(準則型私的整理)
破産した際に抱えている債務を、裁判所における法的手続をとらずに債権者との合意に基づいて解決する方法です。債権者は破産した経営者に対して債務免除や支払い猶予を与えるのが一般的ですが、経営者と債権者がお互いの言い分をぶつけ合うだけでは何も解決しません。通常、一定の枠組みに基づいて準則型私的整理を行っていきます。
代表的な枠組みとして、以下の2つを紹介します。
〇日本弁護士連合会:特定調停スキーム利用の手引(改訂版)
特定調停で会社の債務を整理しながらも、民事再生と異なり会社の信用を守ることができる方法です。弁護士の協力を得て行う私的再生で、弁護士費用は国から一部補助を受けることもできます。
(参考:日本弁護士連合会「特定調停スキーム利用の手引(改訂版)」)
〇地域経済活性化支援機構(REVIC):再チャレンジ支援業務 (特定支援)
経営者保証の付いた債権を持つ金融機関から、REVICが債権を買い取り、事業者が抱える金融債務と経営者保証による債務の整理を一体で行うものです。この仕組みは、事業者と保証人、さらに金融機関の三者が連名で申し込まなければなりません。また、代表取締役などが事業に再度チャレンジすることを表明する必要があります。
(参考:再チャレンジ支援業務 (特定支援)|業務紹介|地域経済活性化支援機構(REVIC))
廃業を回避するための選択肢とは?
ここからは、廃業ではなく事業承継の方法について紹介していきます。手塩にかけて育ててきた事業ですから、できれば誰かに跡を継いでほしいと考える方も多いでしょう。一時的な廃業の回避策や事業承継の方法として、身近な人への承継、M&A、そして引き継ぎ補助金を利用した事業承継について解説します。
休眠会社
休眠会社は読んで字のごとく、事業活動をお休みしている状態の会社です。会社は存続しているため、定期的に登記や税務申告をするといった義務は残りますが、法人税や消費税がかからず廃業のための費用も不要な点がメリットです。また自分たちの条件が整えば、いつでも再開できるのも利点といえます。
しかし財務状況がひっ迫した状態で休眠しても、直接的な解決策とはなりません。そのため休眠会社にしたのちに廃業の準備をするなど、何かしらのアクションは必要となってきます。
なお休業届を出さなかった場合も、12年間登記せずに放置していると休眠会社として扱われてしまいます。そうなると「みなし解散」により強制的に解散させられてしまう場合もあるので、事業再開を考えている場合には注意が必要です。
事業承継・M&A
昔から多く行われてきた事業承継の形が、親族や自社の役員等に引き継ぐ方法です。近年では親族への事業承継が難しくなってきましたが、それでも経営者の子どもや兄弟への事業承継は多く行われています。
このタイプの事業承継におけるリスクは、親族間でもめてしまい、経営を乱すほどのトラブルに発展しかねないことです。また、役員等への承継は社内で理解を得られない可能性もあり、どちらも難しい問題を抱えています。
そのような理由で身内への事業承継ができない場合に、M&Aで第三者へ承継することを検討するケースが増えています。
会社の財務状況や事業内容などにより、M&Aは必ずしも成立するとは限りません。しかし事業や従業員等は守れますし、経営者としては売却益を得られます。また、取引先への影響も少ないなどさまざまなメリットのある方法です。
事業承継・引継ぎ補助金
後継者問題や経営者の高齢化問題などで事業承継が難しいとされている昨今、中小企業の事業承継を経済的に支援する制度が誕生しています。
事業承継をする後継者が、それを機に新規事業を行いたいと考えている場合に新規事業アイデアへの補助金を出す「アトツギ甲子園」という補助金もあります。
(※参考:
中小企業庁「アトツギ甲子園」
中小企業庁「事業承継・引継ぎ補助金(令和3年度)」
中小企業庁「事業承継・引継ぎ・再生支援事業」)
まとめ
廃業というのは、必ずしも倒産や破産を指すものではなく、自主的に行うものもあります。債務超過に陥る前に廃業を選択することで、会社や従業員、取引先への経済的な負担を最小限に留められる可能性もあるので、ときには有効な手段です。
廃業を決め、会社を清算するのは時間も体力も消費します。できれば、事業承継をすることで廃業を回避したいところです。
HLサクセションは事業承継やM&Aの代理人型アドバイザーです。M&Aは従来の仲介型では売り手と買い手の間で利益が相反してしまうことが、近年問題視されています。HLサクセションはあくまでも企業オーナーに寄り添う専属アドバイザーとして売却金額の最大化を目指します。
M&Aによる事業承継を検討しているならば、ぜひHLサクセションに相談してください。
記事監修
HLサクセション株式会社は、オーナー様企業における事業承継案件に特化した代理人型M&Aアドバイザリー会社です。「お客様の最善の利益のために」、オーナー様専属のアドバイザーとして、クライアントのご意向に沿ったM&Aの実現を徹底的に追求いたします。
廃業について 倒産や閉店との違いは?廃業手続き、メリット・デメリットを紹介