事業承継とM&Aの違いやM&Aを選ぶメリット・デメリットなどを解説

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事業承継とM&Aの違いやM&Aを選ぶメリット・デメリットなどを解説

少子高齢化が進む日本では、企業も例外ではなく経営者の高齢化による事業承継が重要な課題となっています。従来の手法で親族に事業を引き継ぐことが難しいため、M&Aを検討しているというケースも増えてきました。しかし、事業承継とM&Aという言葉についておおよその意味はわかっていても、細かい違いについては混同しやすいものです。

この記事では、事業承継とM&A、それぞれの定義や意味の違い、事業承継でM&Aを選ぶメリット・デメリットについて詳しく解説します。

事業承継とM&Aについて

まず、事業承継とM&A、それぞれの定義や意味を正しく把握しておきましょう。

事業承継とは

事業承継は企業の経営権を次の後継者に引き継ぐもので、企業にとっての重要課題の1つです。企業を経営するうえで欠かせないものには人材や技術、商品、資金などが挙げられます。これらは、事業承継で後継者に引き継がれる貴重な企業の財産の対象範囲です。

少子高齢化が進む昨今では、承継したい親族や人材が見つからないという悩みを抱えている中小企業が増えてきました。また、経営者の子どもや親族に承継したくても、高額な贈与時の税金が払えないというケースもあります。親族が承継する場合は贈与にあたるため、相続税評価額に応じた高額の税金が発生するためです。

現経営者が築き上げてきた企業を、後継者が見つからない場合には廃業を検討しなければならないことも大きな問題です。経営状態が良いにもかかわらず黒字廃業を余儀なくされる企業も増えており、経済産業省・中小企業庁の調べでは2025年には70歳以上を迎える中小企業の経営者約245万人のうち、約半数の127万人が後継者未定であり、さらにその約半数が黒字廃業の可能性があるといわれています。企業の将来に大きく影響する事業承継をどのようにするのかが経営者に問われています。

M&Aとは

一方、M&Aという言葉は「Mergers(合併)」と「Acquisitions(買収)」という2つの文字の頭文字から生まれました。企業の合併や買収が行われる手法を大きくまとめて表しています。
M&Aによる買収で企業の経営権を取得する側は、相手企業の経営資源を使い事業拡大や新規事業展開などを目指すことが可能になります。一方で、M&Aは売り手側にとっても課題となっていた事業承継問題が解決できるほか、業績不振などの課題に対する解決方法としても歓迎される手法です。

従来のM&Aに関する報道などでは、主に大企業が多く取り上げられてきました。そのため、中小企業の経営者にはハードルが高く、関係ないものという印象を持ち易かったかもしれません。しかし、昨今ではM&Aは多くの中小企業の経営者が活用する事業承継の手法となっています。
また、必ずしも承継者不足や経営難という課題を抱えているわけではなくても、経営戦略の一環として事業拡大などを目的に利用するケースもあります。時代の流れとともに、M&Aは合理的なビジネス戦略の1つとして捉えられるようになりました。

事業承継とM&Aの違い

M&Aは事業承継の一部です。事業承継自体は言葉の通り事業を誰かに引き継ぐことを指します。承継方法は3種類、親族内承継、親族外承継、そしてM&Aによる承継が存在します。親族内承継は子供や親族へ承継する方法、親族外承継は社内の役員や社員に引き継ぐ方法です。M&Aによる承継は他の会社へ事業を引き継いでもらう方法であり、前述したような承継相手が見つからなかったり、経営状態の理由から親族や従業員などの個人へ承継させることが難しかったりといった場合の選択肢として、年々増えている方法です。

事業承継でM&Aを選ぶメリット

事業承継の1つの方法としてM&Aを検討すれば、親族や従業員など個人以外の後継者の選択肢が増えます。もし事業を引き継ぐ先が見つかっていないようであれば、廃業を回避し従業員の雇用を守れるという大きなメリットもあります。

ほかにも、事業承継後には買収企業によって事業が拡大する可能性があること、廃業に比べると税金が安く抑えられるというメリットもあります。ここでは、事業承継でM&Aを選ぶメリットについて説明します。

後継者の選択肢が増える

後継者不足の昨今では、経営者の子どもや適任の後継者がいない場合は、最終的には廃業するような事態も避けられません。事業承継でM&Aを活用することで、事業を引き継ぐための選択肢が増えることは大きなメリットです。

M&Aは柔軟性の高い事業承継の手法です。M&Aで後継者の選択肢が広がれば、悩んでいた後継者問題は解決できます。経営者がこれまで積み上げてきた経営資産も事業継承先で生かされることになるでしょう。

従業員の雇用が継続できる

M&Aにより事業承継が進めば会社はそのまま継続されるため、従業員の雇用を維持できます。M&Aで買収を行うほとんどの企業は経営状態が優良です。そのため、従業員の雇用維持が実現するほか、安定した雇用条件のもとで働ける可能性も大きくなるでしょう。

経営難に陥った経営者が、従業員の雇用を守るためにM&Aによる事業承継を活用するケースは多くあります。M&Aは、経営者の重要な責務の1つである雇用の維持が実現できる事業承継の手法です。

シナジー効果が期待できる

M&Aにより事業を承継することで事業の拡大につながる、いわゆるシナジー効果が見込めることもM&Aのメリットです。

例えば、売り主の企業が有する経営資産とは異なるものを有する企業が買収する場合、同じ経営路線で継続するよりも事業拡大につながることが期待できます。異なる技術を取り入れて商品の売上が伸びることや、承継先の企業が投資を促進することで事業が拡大する可能性もあるでしょう。

M&Aは廃業するより税金を抑えられる

M&Aによる事業承継は一般的には「株式の売却」という形になります。そのため、事業承継で発生する税金は、分離課税の「株式譲渡益課税」のみになるのも大きなメリットです。

事業承継が実現せずに廃業を選んだ企業には、法人と個人それぞれに税金がかかります。承継者がいないという理由だけで廃業してしまうと、積み上げてきた経営資産が無駄になってしまいます。それと同時にM&Aによる譲渡よりも多く税金がかかってしまう点にも注意が必要でしょう。

事業承継でM&Aを選択するデメリット(注意点)

事業承継でM&Aを選ぶことには多くのメリットがある一方で、デメリットや注意点についても知っておきましょう。

ここでは、このような注意点について解説し、対処法なども紹介します。

買収側の企業との軋轢

M&Aによる事業承継では、社風の異なる企業に買収されたあとは1つのグループになります。それまでの社風と新たなものが無理なく融合するまでには、ある程度の期間が必要です。事業承継後に従業員間に溝ができて埋まらなければ、結果的には転職の動機となる可能性もあります。スムーズな引継ぎのために、M&A後も一定期間は承継した経営者が関与するケースも多くあります。

また、事務手続きの方法や社内システムを変更するなど、承継後には従業員への負担が増える点にも注意が必要です。M&Aを検討している経営者は、売却する企業の社風などについても情報を得ておくとよいでしょう。

人事権や待遇が買収側の判断で変わる可能性がある

M&Aを活用して事業承継が成立すると、経営陣や担当部署の上司などが変わる可能性があります。買収側が必要と考えれば従業員の雇用形態や待遇面なども変わるでしょう。事業承継前から働いている従業員にとっては、業務の進め方や社内体制が変わるため、少なからず戸惑うかもしれません。

従業員にとって不本意と感じる待遇に変更されれば、働くためのモチベーションは下がってしまいます。M&Aを実施する場合には、原則として雇用条件の維持をM&A成立の条件として交渉を進めるとよいでしょう。

日本国内でM&Aは増加傾向

少子高齢化やデフレの長期化が続く昨今では、あらゆる業種において国内市場が縮小する傾向が見られています。特に中小企業の後継者問題は年々深刻になっていて、M&Aによる事業承継の件数は増加傾向にあります。

従来の日本国内におけるM&Aに対するイメージは「買収」という名前の響きや強引なイメージが先行し、あまり良くなかったと考えられます。しかし、近年では国も推進する事業承継の手法となっています。実際に、経済産業省では、中小企業のM&Aを促進させるために事業引き継ぎガイドラインを2020年3月に改定して「中小M&Aガイドライン」を策定しました。M&Aによる事業承継は、廃業を回避するだけでなく事業の安定や成長を目指すものとして注目されています。

まとめ

今まで事業を拡大させてきた経営者の皆様にとって、後継者問題はいつか直面する問題です。自身が事業を存続させたいと考えていても、後継者がいなければ廃業を余儀なくされるケースがあるのは非常に残念なことです。

事業承継を行う方法は親族や社員などの個人に引き継がせる方法だけではありません。M&A(企業の合併や経営権の譲渡)を活用して事業承継課題を解決する企業も年々増えています。

事業承継のためにM&Aを行うべきか迷っている方は、専門知識を有する専門家(アドバイザー)に相談することがおすすめです。GCAサクセションでは事業承継に悩む経営者の皆様を幅広くサポートしております。「事業承継を検討しているけれどどうしたらいいかわからない」「M&Aと聞くと売り手に不利なのではないか」といった不安や疑問がある方はぜひ一度ご相談ください。

記事監修

HLサクセション株式会社は、オーナー様企業における事業承継案件に特化した代理人型M&Aアドバイザリー会社です。「お客様の最善の利益のために」、オーナー様専属のアドバイザーとして、クライアントのご意向に沿ったM&Aの実現を徹底的に追求いたします。

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