事業承継M&Aに関するインタビュー企画第6弾は、譲渡側と譲受側双方のご担当者にお話を伺いました。質問にお答えくださったのは、2019年に実行された事業承継M&Aで譲渡側の藤永製薬株式会社のM&A責任者として奔走された元取締役の西山好隆様と、譲受側のクオールホールディングス株式会社で本件を指揮された同社常務取締役(2021年4月1日同社代表取締役常務就任予定)の石井孝芳様。事業承継M&Aに際し寄せていた思いや実際のプロセスについて、また、M&Aに対し思うことなどをお聞かせいただきました。ご同席いただいたのはGCAサクセションの中村悠太執行役員です。(文中敬称略)
左:クオールホールディングス株式会社代表取締役常務(2021年4月1日同社代表取締役常務就任予定) 石井孝芳様
右:藤永製薬株式会社元取締役 西山好隆様
01. 製薬会社と調剤薬局事業を主とする会社、事業承継M&Aに至った経緯は?
- 藤永製薬が事業承継M&Aを検討するに至った理由をお聞かせいただけますか?
- 西山
- 日本の大手製薬会社は100年ほど前に創業した会社が多いのですが、藤永製薬もまさに当時から続く老舗製薬会社の1つで、第一三共の前身である三共が開発した喘息薬の販売権を譲り受けて大正13年に藤永薬品商会の名で創業した会社です。歴史ある製薬会社としてこれまで創業家が経営を続けてきましたが、一方で事業承継と成長戦略の2つの課題を抱えておりました。そこでまずは銀行紹介のコンサルタントに相談したのですがなかなか成果が出ず、時間ばかり経過して困り果てていました。
そこで、かつて藤永製薬の相談役をしていた方に相談することにしました。大手製薬企業の役員も務められたその方は、幅広い人脈を通じてGCAに相談してくださったのです。そのご縁で、事業承継を専門とするGCAサクセションにM&Aのアドバイザリーをお願いすることになりました。
- 事業承継M&Aに向け、藤永製薬が提示した譲渡条件はどのようなものだったのでしょうか?
- 西山
- 社員の継続雇用と会社の発展を第一に考え、その他の希望条件とともに伝えました。はじめは藤永製薬の名前が消えてしまうこと、私も含めた全役員の解雇等の厳しい条件も覚悟していました。
- 他方、クオールホールディングスが藤永製薬の譲受を検討するに至った経緯は?
- 石井
- 当社は、現会長である中村勝が1992年、50歳のときに起業した会社です。翌年に日本橋兜町に調剤薬局1号店を開局し、現在では800店舗以上の薬局を展開しています。創業から30年足らずでここまで急拡大できたのは、自社出店に加えM&Aも積極的に活用してきたからで、実際M&Aにより当社グループに入った会社は100社以上、M&Aによりクオール薬局となった店舗は全体の約75%を占めています。つまり当社はM&Aで拡大してきた会社です。そのため、創業者も含め全社的にM&Aに取り組んでいます。
当社会長と社長は、かねてから薬局以外の医療関連事業にも興味を持っていました。薬局は制度依存型の事業ですから、収益変動リスクが常につきまといます。そこで2007年には出版関連事業に進出、2012年にはMR(医薬情報担当者)の人材派遣をしているアポプラスステーションを買収するなど、医療関連事業の領域を積極的に広げてきました。
藤永製薬のM&Aのお話は、事業拡大したとはいえ売上の90%以上を占める調剤薬局事業の補完とシナジーが期待できる製薬分野に当たります。藤永製薬という名門会社の承継の危機に黙っていられないという思いもありましたし、製薬会社とのお付き合いを深めてきた当社にとっては製薬にチャレンジする好機でもありました。
- GCAサクセションの中村さんは、本件において藤永製薬側の売り手アドバイザーとして関与されていたとのことですが、なぜクオールホールディングスにお話を持ちかけられたのでしょう?
- 中村
- まず藤永製薬の事業を継承して伸ばしてくださる会社を探すことから着手し、可能性のありそうな複数社にお声掛けをしました。クオールホールディングスの石井さんのことは、5年ほど前からお付き合いがあり事業戦略などについてもお話してくださっていたため、すぐ頭に浮かびました。
M&Aを繰り返されてきたクオールホールディングスは経験値が高く、赤字だったアポプラスステーションを短期間で黒字転化させた実績もあったことから、藤永製薬の業績を伸ばしていただけるという期待がありました。ただし、製薬事業はクオールホールディングスにとって全くの新領域でしたので、興味を持っていただける可能性はそれほど高くないだろうとも考えていました。
- 石井
- 当社の決断は、売り手アドバイザーであるGCAサクセションの中村さんの存在が大きかったです。様々な情報を共有していただき、また、当社の理念や現況などをご存知の上でのお話でしたから、基本はGCAサクセションとの信頼関係ありきで進めさせていただいたようなものです。
当社が製薬事業に進出する上で、老舗企業である藤永製薬の土台が役立つ。他方800店舗以上の薬局を持つ我々は、藤永製薬の既存商品を販売するためのルート開拓ができる。明るい道が拓けるのではないかという期待が持てるお話でしたし、新規事業だから仮に失敗しても仕方がないという感覚でトライできたのも事実です。
当社にとって薬局事業以外は全て、トライ&エラー覚悟です。中村さんとは兼ねてから腹を割って話し合える関係を築いていましたし、「失敗してもいいじゃないか」という会長の言葉にも後押しされ、ここがまさに勝負どころだと判断しました。そして、新社長適任者もすぐに思い至りました。それが現在藤永製薬の代表取締役社長を務めている原田です。
02. 譲渡側代理人の存在は、譲受側にとっての脅威になる?
- 西山さんは原田社長と初めてお会いになった際、どのような印象を受けましたか?
- 西山
- 面談で初めてお会いしましたが、原田社長が藤永製薬の役員をご存知だったため、まずは場を和ませてくださいました。初対面とは思えない温かい雰囲気の面談だったと記憶しています。
- 面談で特に気になるお話などは出ましたでしょうか?
- 西山
- 両社とも東京薬業健康保険組合に入っているという話が出たとき、当社は厚生年金基金と企業年金にも加入していたもののクオールホールディングスはそうではなく、もしかしたら年金が切られてしまうのでは、と覚悟しました。でも実際には加入を維持し、現在でも継続してくださっています。
- 中村
- 譲渡側が譲受側の制度に合わせざるを得ないケースがありますが、クオールホールディングスはできる限り藤永製薬の既存制度を踏襲しようと心掛けてくださいました。
- 石井
- 制度を変えずに事業承継ができる点は、当社のホールディングスという形態が奏功していると思います。傘下に入りやすいだけでなく、それぞれの会社の独自性を維持しながら責任を果たしていただける。創業者の思いがホールディングスという形態に現れているのです。
- 西山
- しかも原田社長が本当にすごい方で。次から次へとアイデアが出てきて、我々が思いもつかなかったことを提案してくださいました。
- 石井
- 藤永製薬といういい会社に巡り合い、適材適所の優秀な人材が見つかったわけです。また、業界のお歴々の皆様も協力してくださり、M&A実行から短期間で業績を大きく伸ばすことができました。
- 中村
- 藤永製薬のように、M&Aからこれだけの短期間での黒字転化は珍しいことです。原田社長が販売元である第一三共と強固なルートを持っていらっしゃったこともその一因ですが、クオールホールディングスのメーカーとの交渉力が効いた。これこそM&Aによるシナジー効果です。
- 石井
- 我々ができる最低限のことにはすぐに着手しました。その上で、リストラなどをせずとも業績回復が見込めると推察できましたし、M&Aを済ませた現在も期待通りに進んでいます。
- 今回のケースでは、GCAサクセションは譲渡側代理人でした。クオールホールディングスにとっては、厳しい交渉相手だったではないでしょうか?
- 石井
- ビジネスですから、当然お互いの意見が食い違うこともありました。でもそこに信頼関係があれば最適解を見出せます。例えば、我々が藤永製薬をどのように評価したかといったことを正直にお話できたからこそ、お互いにとって最善の継承条件を見つけられたのだと思います。
歴史ある藤永製薬の利点を最大限に伸ばすため、我々は旧藤永経営陣のご要望に応える努力をしましたし、藤永製薬スタッフが誠心誠意尽くしてくださっている今もその努力を続けています。
- 中村
- 交渉といってもテレビドラマのような激しい攻防ばかりではありませんし、入札により複数社をギリギリまで競わせる手法ばかりでもありません。私共は売り手側の優先順位を明らかにして、それを満たしていただける譲渡先候補を見つけることが仕事ですから、安心してお任せできる候補が見つかれば、多方面の課題などについて率直に話し合いながら交渉を進めます。譲渡側と譲受側、異なる立場ですから異なる意見や要望が出てくるのは当然のことですが、M&Aによりもっとも影響を受けるのは、譲渡側で働いている従業員の方々です。その方々が安心して働き続けられる環境を作ること、それも私共の重要な仕事です。
- 石井
- M&A専業会社は数多くありますが、残念ながらM&A成立後のことは考えていない会社も多々あります。私はクオールで7年ほどM&Aに携わってきましたが、今回の件では中村さんが成立後も経営陣とコンタクトを取り続けてくださっているので、とても助かっています。案件そのものについても、素晴らしいご縁をいただいたという感謝しかありません。
もちろん克服しなければいけない課題が全くないわけではありません。M&A成立後に出てくる課題もありますが、その点でも中村さんが協力してくださることが心強く思えます。
- 西山
- 藤永製薬も、GCAサクセションの成功報酬型には大いに助けられました。売り手側にとって理解しやすい報酬体系が有難かったです。
- 石井
- オーナー面談にいくら、デューデリジェンスでいくらと決まった数字がある仲介会社も多いですよね。そのお金を得るためだけに話をどんどん進めてしまうM&A会社もあって、私は好きになれません。M&Aは当社の重要な事業拡大手段の1つですから利用せざる得ないこともありますが、経営者に直談判し、時間をかけて信頼関係を築いた上で譲っていただくケースも増えつつあります。
- 中村
- クオールホールディングスはM&Aを繰り返して成功していると業界で認知されていますから、オーナーが直接相談に来られるケースもあるそうです。M&Aが成立した案件は、そういったケースが多いのではないでしょうか?
- 石井
- そうですね。直接取引は今後も積極的に進めるべきと考えています。GCAサクセションのように信頼できる会社からのご紹介であれば安心できますが、そういう会社ばかりではありませんから。また、買う側も売る側も売買金額だけを考えているM&Aでは、クオールホールディングスと藤永製薬のようないい関係は築けないと思っています。
03. M&Aのプロセスで辛かったこと、M&A成立でうれしかったこと
- 藤永製薬にとってM&Aのプロセスで最も大変だったのは、どの時点でしょうか?
- 西山
- 藤永製薬は親族会社かつ歴史の長い会社でしたから、財務や経理の書類がきちんとまとまっているとは言い難い状況でした。特に株主の資料となると、昔の書類なども見つけなければなりませんでした。担当役員と見解が相違することもあり、デューデリジェンスの資料作りにはとても苦労しました。提出が遅れてしまうと悪印象を与えてしまいかねませんから、GCAサクセションや税理士、弁護士に協力していただきながら必死で書類を作り続けたことを覚えています。
- 石井
- M&Aではデューデリジェンスがとても重要です。買う側にとってはどうしても早い時点で拝見しておけなければいけない資料でしたので、西山さんがいらっしゃらなければプロセスが大幅に遅れていたと思います。
- 西山
- 株主のご親族の中には、株主でない私と面識のない方もいましたから、株式譲渡の話し合いにも苦労しました。親族の方々にはGCAサクセションとのミーティングにも参加いただき、最終的には全員のご理解をいただくことができました。
- 中村
- 株主が大勢いらっしゃるケースでは株主の取りまとめ役が必要なように、M&Aのプロセスでは、その時点での課題を解決できるキーパーソンが重要になるのです。今回のケースでは、親族の方のご協力が大きかったですね。
M&Aに対する捉え方は千差万別ですが、それを踏まえ皆様の納得感を醸成することが大事だと心得ています。特に、残っていただく役員・従業員の方々を守らないと、M&A成立後にもシコリが残ってしまいます。
- 従業員や関係者の方々へは、いつクオールホールディングス傘下に入ると発表されましたか? そのときの皆様の反応は?
- 中村
- M&Aが進行中であることを従業員が知ると動揺が広がりますし、業界で噂になってしまった結果、流れてしまうケースもあります。関係者は心苦しく感じたと思いますが、契約成立までは極秘に進めていただきました。
- 西山
- 2019年7月31日が契約締結日、社長にはその1ヶ月ほど前にクオールホールディングスと話が進んでいる旨をお伝えしました。
従業員への発表は契約締結後、マスコミ発表の前です。本社スタッフを集め、工場と研究所のスタッフもオンラインでつないで発表しました。本社スタッフは私が忙しく動いている姿から察していたかもしれませんが、工場と研究所のスタッフは寝耳に水で驚いていた様子でした。
取引先には、8月に入ってから文書でお知らせしました。経営の改善が見込めるM&Aでしたから取引先は安心したと思いますし、譲渡先がクオールホールディングスであれば安心だとおっしゃってくださいました。
- 石井
- 周りにとっても期待の持てるM&A、それこそ縁だと思います。人と人のいい縁の積み重ねでいい結果が生まれますよね。
- 中村
- 原田社長の起用も含め、石井さんが座組みを考えてくださったことで話がスムーズに進みました。その辺りはさすがストロングバイヤーといわれるクオールホールディングス、新しい事業に対する発想も豊かでした。キーパーソンをどう配置し、両社をどのように融合させていくか。契約前から譲受側である石井さんが主体的に動いてくださったことで、目指す方向がより明確になったと思います。
- 石井
- 今回のケースは原田という適任者がいて、あとはバックアップ体制を構築すれば上手くいくだろうと想像できました。その原田が藤永製薬のキーパーソンである西山さんといい関係を築ければ、藤永製薬の立て直しは可能だと判断したのです。
04. 事業を承継した後が大変?従業員のモチベーションの変化は?
- 経営統合や意識統合の段階でトラブルはないのでしょうか?
- 石井
- クオールホールディングスにとっては新たな部署が設立された感覚で、大きなトラブルもなく、現在もいい方向に進んでいると思います。
- 西山
- 製薬会社同士のM&Aではシステム統合などの面でトラブルになるケースがあるのかもしれませんが、藤永製薬は部署ごとに独自のシステムを使っていたため、ネットワークなどはクオールホールディングスの既存システムに組み込んでいただくだけで済みました。同業同士でないことのメリットといえるかもしれません。
営業部ではコンピュータを多用するようになりましたが、若いスタッフはすぐに馴染み、表情も明るくなったと感じています。また、新体制ではマネージャーなどの役職を若い人にも任せるようにしています。
- 石井
- リストラなど一切せずに、いい形で世代交代が進んでいると思います。新体制では様々な面で新しい試みを導入し、それが若手の活性化といういい効果にもつながっています。また、早くも藤永製薬独自でMRの新規採用もできています。
- 西山
- クオールホールディングスのブランド力と安定感で、特に営業職の人材を採用しやすくなりました。また、工場にも大手外資製薬会社から優秀な方が4人ほど来てくださり、ちょうど空いてしまった工場長のポストに就いてくださる方も見つかりました。
藤永製薬には、年功序列の昇進や給与体系などまだまだ古い制度が残っています。次年度には能力給制度を導入しようと昨年から準備を進めてきましたが、昨年末時点で改革草案ができていましたので、私も安心して退職できた次第です。
- M&Aが古い制度を見直すいい機会になったわけですね。では、事業承継に悩むオーナー様に対して改めてアドバイスをお願いいたします。
- 西山
- アドバイスというより、体験談なのですが。M&Aから遡ること2-3年前に、数名のいい人材が辞めてしまいました。今にしてみれば、後継者がいないことや会社の収益が落ちていることが不安だったのでは、と思います。今回はとてもいい結果になりましたが、もう少し早く決断していれば、そういった優秀な人材を手放さなくて済んだのではと悔やまれます。
当社の保有資産を理由に「藤永製薬は大丈夫」との声もありましたが、会社はやはり収益を上げなければダメ。資産があるという安心感が、逆に会社の成長を妨げていた部分があったと痛感しました。
- 石井
- 事業承継に悩みがあるのなら、やはり早めに専門家に相談すべきですね。藤永製薬も一度はコンサルティング会社を入れたとのことですが、会社ごとの特性をきちんと理解してアドバイスしてくれるアドバイザーを見極めないと、無駄に高額なコンサルタント料を払うはめになってしまいます。会社の看板だけで判断せず、この人なら任せられるという人と巡り会えるかどうか、それが重要だと思います。
我々は、課題を抱える会社に対し力になれることがあれば協力したいと思っています。また、新しいスタッフは一緒に事業を拡大してくれる「仲間」だと考えています。乗っ取りや収益アップだけを目的とするM&Aを重ねていては、事故や問題が起こるものです。売る側・買う側がお互いの力を合わせて課題を解決していくのがM&Aですし、同じ傘の下で目標を共有し、よりいい人生を歩むことを目指すのがM&Aの本質なのではないでしょうか。
- 中村
- グループ傘下に入って従業員のモチベーションが落ちてしまい業績が悪化するのでは、私共もM&Aをお手伝いする意味がありません。
- 石井
- 間に入るM&A会社には、両社がいい形で融合するまで見届けていただきたいと思いますね。その点、契約締結後も気にかけてくださるGCAサクセションには感謝しています。買い手と売り手とM&A会社は三位一体。この3社の歯車が噛み合っていなければ、いい結果にはならなかったと思います。
M&Aでは売る側にも買う側にも責任があります。どちらが上とか下とかいう話ではなく、どちらも大きな責任を負って一緒になるわけです。今回のケースでは、当社は新規事業に多大な投資をしたわけですから、責任感を持って遂行してくれる人がいないと困ります。そういったことも含め、両社が良好な関係を構築できるよう調整するM&A会社の存在が大事なのです。
- 西山
- 昨年、元株主の親族の方々と顔を合わせる機会がありましたが、皆様がGCAサクセションとクオールホールディングスに感謝されていました。社長が存命のうち、そして、コロナ禍に巻き込まれない絶妙なタイミングでクロージングできたこともよかったと思います。個人的には100%の満足度です。
- 石井
- 1年遅れていたら、なかった話かもしれませんね。
- 西山
- かつての藤永製薬は、親族会社のせいか秘密主義でした。クオールホールディングス傘下に入ってからは、部長会などで会社の状況などを共有していますから、工場や研究所のスタッフも会社の現状を把握できるようになりました。今は部署ごとの苦労や課題などがわかるようになり、新しいプロジェクトも次々と出てきています。すごくいい方向に向かっていると感じています。
- 西山様は昨年末で退職されたとのことですが、最終日はどんな思いでしたか?
- 西山
- 工場や研究所にも挨拶に行きましたが、最後は温かく送り出してくれました。工場から帰るときには、正門の前にスタッフ全員がずらりと並んでくれて。思わず涙が溢れてきました。
- 石井
- 従業員の方に慕われ、いい関係を築かれていたことがわかる、素晴らしいエピソードですね。
- 西山
- クオールホールディングス傘下に入らなければ今頃どうなっていたか…。従業員は口に出しませんが、皆同じ思いだったと思います。
- こんなにも相思相愛の事業承継M&Aのお話を聞けて、こちらも嬉しくなってきました。本日は長時間のインタビューにお答えくださいまして、ありがとうございました。
今回のインタビューでは、売り手だけでなく買い手のお話もお聞かせいただきましたが、いかがだったでしょうか? 私自身、インタビューを重ねることで売る側の思いやこだわりは理解してきたものの、買う側は「会社」だと思っていたことに気付かされました。事業承継M&Aは、会社を作り育て上げてきた人たち=売り手の思いと、新しい仲間を受け入れ伸ばしていきたいという人たち=買い手の思いを融合させ、双方が幸せになれる道を目指すこと。人と人との信頼関係の上に成り立つことがわかり、また、その間にいるM&Aアドバイザーの役割の重要性に対する認識も深まりました。
ご勇退された西山様の今後のご多幸をお祈りしつつ、クオールホールディングスの今後ますますのご発展と、傘下に入られた藤永製薬のさらなるご活躍を楽しみにしています!(文:玉野菜穂)
中村 悠太(なかむら ゆうた)
GCAサクセション執行役員。慶慶應義塾大学卒、米国公認会計士試験合格、2019年GCA入社。大手監査法人M&Aチームにてバリュエーション、ストラクチャリング、ビジネス財務DD、PMIなどM&Aにおける広範な業務を手掛けた後、大和証券SMBCにて大手企業の経宮統合、事業買収、TOB、MBO、買収防衛アドバイザリー等の案件責任者として数多くのM&Aアドバイザリーを遂行。デロイトトーマツファイナンシャルではミドルマーケットを主体とした国内外案件の発掘から案件遂行まで主導し、多様なニーズに応じたワンストップサービスの拡大・提供体制の構築を推進するなど過去20年間にわたりM&Aアドバイザリー業務に従事。主な著作に「M&A実務のすべて」(共著、日本実業出版社)、「会計がわかる辞典」(共著、同)等。
記事監修
HLサクセション株式会社は、オーナー様企業における事業承継案件に特化した代理人型M&Aアドバイザリー会社です。「お客様の最善の利益のために」、オーナー様専属のアドバイザーとして、クライアントのご意向に沿ったM&Aの実現を徹底的に追求いたします。
●インタビュー企画● ここが知りたい!中小企業のM&A 第6弾~藤永製薬の事業承継